・自己造血幹細胞移植適応のない新規多発性骨髄腫患者が対象の第3相試験
・ニンラーロ単剤療法の有効性・安全性を比較検証
・無増悪生存期間プラセボ群9.4ヶ月に対してニンラーロ群17.4ヶ月統計学的有意に改善
2020年6月11日~14日、バーチャルミーティングで開催された第25回欧州血液学会議(EHA 2020)にて自己造血幹細胞移植(ASCT)適応のない新規多発性骨髄腫患者に対する維持療法としてのプロテアソーム阻害薬であるイキサゾミブ(商品名ニンラーロ;以下ニンラーロ)単剤療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のTOURMALINE-MM4試験(NCT02312258)の結果がNational and Kapodistrian University of Athens School of MedicineのMeletios A. Dimopoulos氏らにより公表された。
TOURMALINE-MM4試験とは、自己造血幹細胞移植(ASCT)適応のない新規多発性骨髄腫患者に対する維持療法として28日を1サイクルとして1,8,15日目にニンラーロ3mg(5サイクル目以降、忍容性がある場合4mg)単剤療法を投与する群(N=425人)とプラセボ療法を投与する群(N=281人)に3対2の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)を検証した国際多施設共同二重盲検下第3相試験である。
本試験に登録された患者の年齢中央値はニンラーロ群72歳に対してプラセボ群73歳、75歳以上の割合はニンラーロ群38%に対して39%。ISS分類ステージIIIの割合はニンラーロ群35%に対してプラセボ群36%。導入療法の奏効率はニンラーロ群で完全奏効率(CR)23%、最良部分奏効率(VGPR)40%、部分奏効率(PR)38%に対してプラセボ群で完全奏効率(CR)22%、最良部分奏効率(VGPR)40%、部分奏効率(PR)38%。導入療法の主なレジメンはニンラーロ群でVMP30%、CyBorD28%に対してプラセボ群VMP32%、CyBorD29%。
本試験主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はニンラーロ群17.4ヶ月に対してプラセボ群9.4ヶ月、ニンラーロ群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを34.1%(HR:0.659,95%信頼区間:0.542–0.801, p<0.001)統計学的有意に改善した。
また、導入療法で完全奏効(CR)、最良部分奏効(VGPR)を達成した患者群の無増悪生存期間(PFS)中央値はニンラーロ群25.6ヶ月に対してプラセボ群12.9ヶ月、ニンラーロ群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを41.4%(HR:0.586, p<0.001)統計学的有意に改善した。
導入療法で部分奏効(PR)を達成した患者群の無増悪生存期間(PFS)中央値はニンラーロ群10.2ヶ月に対してプラセボ群6.5ヶ月、ニンラーロ群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを24.4%(HR:0.756)改善した。
年齢別の無増悪生存期間(PFS)では、75歳未満の患者群の無増悪生存期間(PFS)中央値はニンラーロ群17.7ヶ月に対してプラセボ群9.3ヶ月(HR:0.615)、75歳以上の患者群の無増悪生存期間(PFS)中央値はニンラーロ群16.7ヶ月に対してプラセボ群10.6ヶ月(HR:0.738)を示した。
ISS分類ステージ別の無増悪生存期間(PFS)はステージI/IIの患者群の無増悪生存期間(PFS)中央値はニンラーロ群17.4ヶ月に対してプラセボ群10.6ヶ月(HR:0.641)、ステージIIIの患者群の無増悪生存期間(PFS)中央値はニンラーロ群16.6ヶ月に対してプラセボ群7.8ヶ月(HR:0.695)。
安全性として、全グレードの治療関連有害事象(TRAE)発症率はニンラーロ群91%に対してプラセボ群82%、重篤な治療関連有害事象(TRAE)発症率はニンラーロ群22%に対してプラセボ群17%、治療関連有害事象(TRAE)による治療中止率はニンラーロ群13%に対してプラセボ群8%を示した。ニンラーロ群で最も多くの患者で確認された治療関連有害事象(TRAE)は吐き気27%、嘔吐24%、下痢23%であった。
以上のTOURMALINE-MM4試験の結果よりMeletios A. Dimopoulos氏らは「自己造血幹細胞移植(ASCT)適応のない新規多発性骨髄腫患者に対する維持療法としてのプロテアソーム阻害薬ニンラーロ単剤療法は、無増悪生存期間(PFS)を統計学的有意に改善し、安全性プロファイルも良好でした。以上の結果より、本治療は新しい治療選択肢になり得る可能性が示唆されました」と結論を述べている。
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