2020年8月24日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて60歳以上の転移性軟部肉腫患者に対するファーストライン治療としての血管新生阻害薬(VEGFR)であるパゾパニブ単剤療法のドキソルビシン単剤療法に対する有効性、安全性を検証した第2相試験(NCT01861951)の結果がMedical School HannoverのViktor Grünwald氏らにより公表された。
本試験は、60歳以上の転移性軟部肉腫患者に対して1日1回パゾパニブ800mg単剤療法を投与する群(N=81人)、または3週を1サイクルとしてドキソルビシン75mg/m2単剤療法を投与する群(N=39人)に2対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)のドキソルビシンに対する非劣勢(HR比の95%信頼区間の上限が1.8未満と定義)、副次評価項目として全生存期間(OS)、客観的奏効率(ORR)、好中球減少症、発熱性好中球減少症の発症率などを比較検証した2相試験である。
転移性軟部肉腫に対する標準治療はドキソルビシンであるが、本治療は好中球減少症、発熱性好中球減少症等の化学療法関連有害事象(AE)の発症率が高率である。例えば、60歳以下の患者におけるドキソルビシンのグレード4の好中球減少症、発熱性好中球減少症の発症率はそれぞれ34%、9%であるため、高齢者の脆弱性を考慮するとドキソルビシン単剤療法による治療が困難である場合がある。以上の背景より、血液関連毒性が限られた血管新生阻害薬(VEGFR)であるパゾパニブ単剤療法の有用性を検証する目的で本試験が開始された。
本試験の年齢中央値は71歳(60~88歳)であった。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はパゾパニブ群4.4ヵ月(95%信頼区間:2.7-6.0ヵ月)に対して、ドキソルビシン群5.3ヵ月(95%信頼区間:1.7-8.2ヵ月)と、ドキソルビシン群に対するパゾパニブ群の非劣勢が示された(HR:1.00,95%信頼区間:0.65-1.53)。
また、副次評価項目である全生存期間(OS)中央値は、パゾパニブ群12.3ヵ月(IQR:6.0-25.8ヵ月)に対して、ドキソルビシン群14.3ヵ月(IQR:7.1-27.0ヵ月)と、両群間で統計学有意な差は確認されなかった(HR:1.08,95%信頼区間:0.68-1.72,P=0.735)。客観的奏効率(ORR)はパゾパニブ群12.3%に対してドキソルビシン群15.4%を示した。
一方の安全性として、グレード4の好中球減少症、発熱性好中球減少症発症率はドキソルビシン群で高率であり、パゾパニブ群で血液関連有害事象(AE)は低率であった。
以上の第2相試験の結果よりViktor Grünwald氏らは「60歳以上の転移性軟部肉腫患者に対するファーストラインとしての血管新生阻害薬(VEGFR)パゾパニブ単剤療法は、現在の標準治療であるドキソルビシンに対して無増悪生存期間(PFS)の非劣勢を示し、忍容性も良好でした」と結論を述べている。
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