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抗体薬物複合体が早期治療に進出Evaluate Vantage(2021.08.09)より

  • [公開日]2021.08.25
  • [最終更新日]2021.08.24

※本記事はEvaluate社の許可のもと、オンコロが翻訳したものです。内容および解釈については英語の原文を優先します。正確な内容については原文をお読みください。

 

英アストラゼネカ社/第一三共株式会社のエンハーツ(一般名:トラスツズマブ デルクステカン(遺伝子組換え))とスイス・ロシュ社のポライビー(一般名:ポラツズマブ ベドチン(遺伝子組換え))は、既存の早期治療ラインの薬剤を脅かす可能性のある重要な試験結果を残した。

アストラゼネカ社のエンハーツとロシュ社のポライビーが持つ潜在的な目標は、これらの抗体薬物複合体(ADC)が現行の添付文書に記載されているラインよりも早期の治療ラインに進めることにある。今朝(8月8日)、この目標を達成するための主要な試験において、両者は重要な成功を収めたようだ。

エンハーツとポライビーは、それぞれ乳がんとリンパ腫という異なる疾患を対象としているが、同じような経緯をたどっており、2019年に米国で早期承認を取得したものの、これまでのところ売上は控えめなレベルにとどまっている。本日(8月8日)発表されたDestiny-Breast 03試験とPolarix試験からのデータはまだ得られていないが、証券アナリストが見積もった両薬剤に対する2026年の売上予想、41億ドルと14億ドルの達成の可否はこれらの試験結果によって決まるであろう。

2週間前、アストラゼネカ社は三次治療以降のHER2陽性乳がんで最初の適応をとったADC薬エンハーツの上半期の売り上げを8900万ドルと報告した。同社はこの適応症で非対照のDestiny-Breast 01試験に基づき、早期承認を獲得した。

今朝方に発表された成功はDestiny-Breast 03試験に関するもので、二次治療の乳がんを対象に、エンハーツと同剤のライバルであるロシュ社のADC 「カドサイラ(一般名:トラスツズマブ エムタンシン(遺伝子組換え))」をアクティブコントロール群として比較した初めての試験である。アストラゼネカ社によると、データモニタリング委員会は、無増悪生存期間PFS)の中央値が「有意で臨床的に意味のある」改善を示したため、暫定的な中止を推奨したと述べた。全生存期間OS)は未熟であるが、良好な傾向にあるとしている。

生存率の改善と間質性肺疾患の発生率の意義ある定量化のためには、完全なデータが必要となり、間質性肺疾患はブラックボックス化された有害事象で早期治療への適応を妨げる可能性がある。完全な結果を発表する場としては、欧州臨床腫瘍学会議(ESMO)やSan Antonio Breast Cancerのミーティングなどが考えられる。

しかし、アストラゼネカ社は時間を無駄にせず、ここ3ヶ月の間に開始された一次治療のDestiny-Breast 09試験を含め、乳がんを対象としたエンハーツの試験を数多く実施している。おそらくこれは、第一三共社からの13.5億ドルでのライセンスという当社のエンハーツに対する大きな賭けと、HER2陽性乳がんにおける競争激化によって、拍車がかけられているだろう。

実際に本日(8月8日)、米Seagen社は2億ドルを投じて、中国のRemegen社開発のあまり知られていない抗HER2 ADCであるdisitamab vedotin/RC48-ADCの権利を獲得したばかりである。しかし、disitamab vedotinは2年前に提示されたデータによって、HER2陽性の尿路上皮がんを対象として米国の画期的治療薬に指定されているが、乳がんは主な対象ではない。

投資家は、ハーセプチンとの併用でHER2陽性乳がんの二次治療薬として承認済のSeagen社の低分子化合物「Tukysa(一般名:ツカチニブ)」に対する同社の信念について、どのような意図でRemegen社との契約がなされたかを尋ねてみるといいだろう。

リンパ腫ファースト?

ロシュ社は、抗CD79B抗体薬物複合体であるポライビーを、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の一次治療でPFSを改善する20年ぶりの治療薬に位置づけようとしており、この主張はPolarix試験の結果によって裏付けられる。

ポライビーは、トレアキシン(一般名:ベンダムスチン)およびリツキサン(一般名:リツキシマブ)との併用において、三次治療以降のDLBCLで承認されており、2021年上半期の売上高は1億300万ドルだった。Polarix試験では、リツキサンとCHP(シクロホスファミド+ドキソルビシン+プレドニゾン)療法にポライビーを加え、一次治療として評価した。このレジメンは、治験責任者が評価したPFSの中央値でリツキサン+CHOP化学療法に勝っていると言われている。

再発・難治性の治療においてCAR-T療法が承認され、独Morphosys社と米Incyte社の抗CD19抗体「Monjuvi(一般名:tafasitamab)」が二次治療として承認された以外には、DLBCL領域では治療の進歩があまりみられなかった。しかし、米ジェフリーズ社のアナリストは、Polarix試験の結果がリツキサン-CHOPからの全面的な切り替えを正当化するのに十分であるとは考えていない。12月のASHで発表される予定のPolarix試験の完全なデータがすべてを明らかにするだろう。

いずれにせよ、長年の失敗を経て、ADCベースの薬剤がようやく前進していることは明らかだ。そしてSeagen社は、この小さな領域で大きなパイを占めているように見える。例えば、同社の技術はポライビーに裏打ちされており、この米国企業は第一三共社との契約を結んでいたが、現在はエンハーツをめぐる訴訟の対象となっている。

ADCの専門家であるSeagen社が、自ら開発することを期待される薬剤をなぜ外部のRemegen社から持ち込まなければならなかったのかについて、今、一部の投資家が疑問に思っていることだろう。

■出典
Antibody-drug conjugates advance into early therapy

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