・ハイリスクトリプルネガティブ局所進行性乳がん患者が対象の第3相試験
・術前化学療法としての化学療法+テセントリクの有効性・安全性を化学療法のみと比較検証
・病理学的完全奏効率はテセントリク+化学療法群で48.6%を示すも、
化学療法群(44.4%)に対して統計学有意な差は認めず
2022年2月16日、医学誌『Annals of Oncology』にてハイリスクトリプルネガティブ局所進行性乳がん患者に対する術前化学療法としての化学療法±抗PD-L1抗体薬であるテセントリク(一般名:アテゾリズマブ、以下テセントリク)の有効性、安全性を検証した第3相のNeoTRIPaPDL1試験(NCT002620280)の結果がFondazione MichelangeloのL. Gianni氏らにより公表された。
NeoTRIPaPDL1試験は、ハイリスクトリプルネガティブ局所進行性乳がん患者(N=280人)に対する術前化学療法として、3週を1サイクルとして1、8日目にカルボプラチン AUC2+ナブパクリタキセル125mg/m2+1日目にテセントリク1200mg併用療法を8サイクル実施する群(N=138人)、3週を1サイクルとして1、8日目にカルボプラチン AUC2+ナブパクリタキセル125mg/m2併用療法を8サイクル実施する群(N=142人)に無作為に振り分け、主要評価項目として無イベント生存期間(EFS)、副次評価項目として病理学的完全奏効率(PCR)などを検証した多施設共同ランダム化の第3相試験である。
本試験が開始された背景として、トリプルネガティブ乳がんは予後不良であり、化学療法への抵抗性を示し、転移ステージへ病勢進行しやすい疾患である。また、免疫チェックポイント阻害薬は従来の化学療法の効果を高めるというデータが得られている。以上の背景より、新規治療薬の確立が必要とされるトリプルネガティブ乳がんに、免疫チェックポイント阻害薬であるテセントリクと化学療法を併用した本治療の有用性を検証する目的で本試験が開始された。
本試験の結果、病理学的完全奏効率(PCR)は、テセントリク+化学療法群の48.6%に対して化学療法群で44.4%と、統計学有意な差は確認されなかった(OR:1.18、95%信頼区間:0.74-1.89、P=0.48)。
一方の安全性として、全グレードの有害事象(AE)の発症率は両群間で同等であり、テセントリク+化学療法群で多くの患者に確認された有害事象(AE)は肝トランスアミナーゼ異常であった。また、重篤な有害事象(SAE)はテセントリク+化学療法群で高率であった。
以上のNeoTRIPaPDL1試験の結果よりL. Gianni氏らは「ハイリスクトリプルネガティブ局所進行性乳がん患者に対する術前化学療法としての化学療法への抗PD-L1抗体薬テセントリク上乗せは、病理学的完全奏効率(pathological CR)を統計学的有意に改善しませんでした。無イベント生存期間に関する継続的なフォローアップが進行中です」と述べている。
乳がんの治験・臨床試験広告
リサーチのお願い
この記事に利益相反はありません。