2019年3月12日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて脳転移のあるHER2陽性乳がん患者に対するHER1/2/4阻害薬であるネラチニブ+カペシタビン併用療法の有効性。安全性を検証した第II相試験(NCT01494662)の結果がDana-Farber Cancer Institute・Rachel A. Freedman氏らにより公表された。
本試験は、脳転移のあるHER2陽性乳がん患者に対して1日1回ネラチニブ240mg+1日2回カペシタビン750mg/m2を14日間投与後7日間休薬し、主要評価項目として腫瘍が中枢神経系(CNS)に転移した患者における客観的奏効率(ORR)、副次評価項目として無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)などを検証した第II相試験である。なお、患者はラパチニブ治療歴にある場合はコーホート3A、ない場合はコーホート3Bとして振り分けられている。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値は3A群で54.0歳(31-64歳)に対して3B群で53.5歳(36-60歳)。性別は3A群で女性100%に対して3B群で女性100%。ECOG Performance Statusは3A群でスコア0が35%(N=13人)、スコア1が54%(N=20人)、スコア2が11%(N=4人)に対して3B群でスコア0が42%(N=5人)、スコア1が50%(N=6人)、スコア2が8%(N=1人)。
人種は3A群で白人86%(N=32人)、黒人3%(N=1人)、アジア人5%(N=2人)、その他5%(N=2人)に対して3B群で白人58%(N=7人)、黒人17%(N=2人)、アジア人0%、その他25%(N=3人)。エストロゲン受容体ステータスは3A群で陰性57%(N=21人)、陽性43%(N=16人)に対して3B群で陰性50%(N=6人)、陽性50%(N=6人)。
中枢神経系(CNS)への前治療歴は3A群で手術30%(N=11人)、定位放射線手術35%(N=13人)、全脳照射65%(N=24人)、なし8%(N=3人)に対して3B群で手術25%(N=3人)、定位放射線手術58%(N=7人)、全脳照射42%(N=5人)、なし8%(N=1人)。化学療法の前治療歴中央値は3A群で1レジメン(0-5レジメン)に対して3B群で1レジメン(0-3レジメン)。
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である腫瘍が中枢神経系(CNS)に転移した患者における客観的奏効率(ORR)は3A群49%(95%信頼区間:32%-66%,N=18人)に対して3B群33%(95%信頼区間:10%-65%,N=4人)を示した。
副次評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値は3A群5.5ヶ月(95%信頼区間:0.8-18.8ヶ月)に対して3B群で3.1ヶ月(95%信頼区間:0.7-14.6ヶ月)。全生存期間(OS)中央値は3A群13.3ヶ月(95%信頼区間:2.2-27.6ヶ月)に対して3B群で15.1ヶ月(95%信頼区間:0.8-23.7ヶ月)。
一方の安全性として、両群間で確認されたグレード2、グレード3の治療関連有害事象(TRAE)は下記の通りである。グレード2の治療関連有害事象(TRAE)は下痢33%(N=16人)、吐き気18%(N=9人)、嘔吐16%(N=8人)、倦怠感16%(N=8人)などであった。また、グレード3の治療関連有害事象(TRAE)は低カリウム血症12%(N=6人)、倦怠感10%(N=5人)、吐き気6%(N=3人)、嘔吐4%(N=2人)、脱水4%(N=2人)、低リン血症4%(N=2人)などであった。
なお、治療中止に至った主な理由としては3A群で中枢神経系(CNS)の病勢進行62%(N=23人)、予期せぬ有害事象(AE)22%(N=8人)に対して3B群で中枢神経系(CNS)の病勢進行22%(N=8人)、死亡8%(N=1人)などであった。
以上の第II相試験の結果よりDana-Farber Cancer Institute・Rachel A. Freedman氏らは以下のように結論を述べている。”脳転移のあるHER2陽性乳がん患者に対するネラチニブ+カペシタビン併用療法は良好な抗腫瘍効果を示しました。また、忍容性も問題ありませんでしたが、本治療により発症する下痢を最小化するための方法は必要になるでしょう。”
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