「個人情報保護方針」及び「個人情報の取扱いについて」改訂のお知らせ

未治療の進行性膵腺がん患者に対するゲムシタビン+ナブパクリタキセル+ヒドロキシクロロキン、1年全生存率を統計学的有意に改善しないJAMA Oncologyより

  • [公開日]2019.05.31
  • [最終更新日]2019.05.30
この記事の3つのポイント
・未治療の進行性膵腺がん患者が対象の第2相試験
・ムシタビン+ナブパクリタキセル±ヒドロキシクロロキン併用療法有効性安全性を比較検証
・ヒドロキシクロロキン上乗せは1年全生存率を有意に改善しなかったが、客観的奏効率の上乗せ効果を確認

2019年5月23日、医学誌『JAMA Oncology』にて未治療の進行性膵腺がん患者に対するゲムシタビン+ナブパクリタキセル±ヒドロキシクロロキン併用療法の有効性、安全性を比較検証した第2相試験(NCT01506973)の結果がUniversity of PennsylvaniaのThomas B. Karasic氏らにより公表された。

本試験は、未治療の進行性膵腺がん患者(N=112人)に対してゲムシタビン+ナブパクリタキセル+ヒドロキシクロロキン併用療法を投与する群(N=55人)、またはゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法を投与する群(N=57人)に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として1年全生存率(OS)、副次評価項目として安全性、無増悪生存期間PFS)、全生存期間(OS)、客観的奏効率(ORR)などを検証した第2相試験である。

本試験に登録された患者背景は下記の通りである。

年齢中央値
ゲムシタビン+ナブパクリタキセル+ヒドロキシクロロキン併用群=64歳(48-86歳)
ゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用群=65歳(43-82歳)

性別
ゲムシタビン+ナブパクリタキセル+ヒドロキシクロロキン併用群=女性38%(N=22人)、男性62%(N=33人)
ゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用群=女性40%(N=23人)、男性60%(N=33人)

CA19-9中央値
ゲムシタビン+ナブパクリタキセル+ヒドロキシクロロキン併用群=2046U/ml(1-113610)
ゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用群=1375U/ml(2-50111)

腫瘍部位
ゲムシタビン+ナブパクリタキセル+ヒドロキシクロロキン併用群=膵頭部40%(N=22人)、膵体部36%(N=20人)、膵尾部24%(N=13人)
ゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用群=膵頭部51%(N=29人)、膵体部26%(N=15人)、膵尾部23%(N=13人)

以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である1年全生存率(OS)はゲムシタビン+ナブパクリタキセル+ヒドロキシクロロキン併用群41%(95%信頼区間:27%-53%)に対してゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用群49%(95%信頼区間:35%-61%)、ヒドロキシクロロキンの併用有無により1年全生存率(OS)に統計学的有意な差は確認されなかった。

副次評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はゲムシタビン+ナブパクリタキセル+ヒドロキシクロロキン併用群5.7ヶ月(95%信頼区間:4.0-9.3ヶ月)に対してゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用群6.4ヶ月(95%信頼区間:4.5-7.6ヶ月)。

全生存期間(OS)中央値はゲムシタビン+ナブパクリタキセル+ヒドロキシクロロキン併用群11.1ヶ月(95%信頼区間:9.0-14.2ヶ月)に対してゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用群12.1ヶ月(95%信頼区間:9.3-15.5ヶ月)。客観的奏効率(ORR)はゲムシタビン+ナブパクリタキセル+ヒドロキシクロロキン併用群38.2%に対してゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用群21.1%。

一方の安全性として、グレード3または4の治療関連有害事象(TRAE)発症率は下記の通りである。好中球減少症はゲムシタビン+ナブパクリタキセル+ヒドロキシクロロキン併用群42.6%に対してゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用群22.6%。貧血はゲムシタビン+ナブパクリタキセル+ヒドロキシクロロキン併用群3.7%に対してゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用群17.0%。

倦怠感はゲムシタビン+ナブパクリタキセル+ヒドロキシクロロキン併用群7.4%に対してゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用群0%。末梢神経障害はゲムシタビン+ナブパクリタキセル+ヒドロキシクロロキン併用群13.0%に対してゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用群5.7%。精神神経症状はゲムシタビン+ナブパクリタキセル+ヒドロキシクロロキン併用群5.6%に対してゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用群0%。

以上の2相試験の結果よりUniversity of Pennsylvania・Thomas B. Karasic氏らは以下のように結論を述べている。”未治療の進行性膵腺がん患者に対するゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法へのヒドロキシクロロキン上乗せは、1年全生存率(OS)を統計学的有意に改善しませんでした。一方、客観的奏効率(ORR)においてはヒドロキシクロロキンによる上乗せ効果が確認されました。”

Effect of Gemcitabine and nab-Paclitaxel With or Without Hydroxychloroquine on Patients With Advanced Pancreatic Cancer A Phase 2 Randomized Clinical Trial(JAMA Oncol. 2019 May 23. doi: 10.1001/jamaoncol.2019.0684.)

×

この記事に利益相反はありません。

会員登録 ログイン