・HER2陰性エストロゲン受容体陽性の閉経後早期乳がん患者が対象の第2相試験
・術前化学療法としてのレトロゾール+タセリシブ併用療法の有効性・安全性を検証
・客観的奏効率はプラセボ群の39%に対して、併用群は50%と改善した
2019年8月8日、医学誌『The Lancet Onoclogy』にてHER2陰性エストロゲン受容体陽性の閉経後早期乳がん患者に対する術前化学療法としてのレトロゾール+次世代ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K;以下PI3K)阻害薬であるタセリシブ併用療法の有効性、安全性を検証した第2相のLORELEI試験(NCT02273973)の結果がUniversity Hospital, 08035 BarcelonaのCristina Saura氏らにより公表された。
LORELEI試験とは、HER2陰性エストロゲン受容体陽性の閉経後早期乳がん患者(N=334人)に対する術前化学療法として1日1回レトロゾール2.5mg+1週を1サイクルとして1~5日目にタセリシブ 4mg併用療法を16週間投与する群(N=166人)、または1日1回レトロゾール2.5mg+1週を1サイクルとして1~5日目にプラセボ併用療法を16週間投与する群(N=168人)に分け、主要評価項目として客観的奏効率(ORR)、病理学的完全奏効率(pCR)を比較検証した第2相試験である。
本試験が開始された背景として、PI3K経路はホルモン療法に対して抵抗性を示すことが判っている。次世代PI3K阻害薬であるタセリシブは、PIK3CA変異陽性のがん細胞に対する抗腫瘍効果を高め、ホルモン療法と併用することでその相乗効果が期待されている。以上の背景より、レトロゾール+タセリシブ併用療法の有用性が本試験で検証された。
本試験の結果、主要評価項目である客観的奏効率(ORR)はタセリシブ群50%(N=83人)に対してプラセボ群39%(N=66人)、タセリシブ群で高率であった(オッズ比:1.55,95%信頼区間:1.00-2.38,P=0.049)。もう1つの主要評価項目である病理学的完全奏効率(pCR)はタセリシブ群2%(N=3人)に対してプラセボ群1%(N=1人)、両群間で統計学的有意な差は確認されなかった(オッズ比:3.07,95%信頼区間:0.32-29.85,P=0.37)。
一方の安全性として、タセリシブ群で最も多くの患者で確認されたグレード3または4の治療関連有害事象(TRAE)は消化器系障害8%、感染症5%であった。なお、タセリシブ群で1人の患者の死亡が確認されたが、その原因は治療関連有害事象(TRAE)によるものではなかった。
以上のLORELEI試験の結果よりCristina Saura氏らは以下のように結論を述べている。”HER2陰性エストロゲン受容体陽性の閉経後早期乳がん患者に対する術前化学療法としてのレトロゾール+タセリシブ併用療法は、客観的奏効率(ORR)を改善しました。”
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