膵臓がんの再発・転移
治療によって一度はみえなくなったがんがまた出現することを再発、 がんがすい臓周囲のリンパ節やほかの臓器へ広がることを転移といいます。 社会的なサポートも活用しながら治療やケアを受けることが大切です。
再発とは、手術で取りきれたようにみえたがんが、目にみえない状態で体のどこかに残っており、再びすい臓やほかの臓器に出現した状態です。転移は、がん細胞がリンパ液や血液の流れに乗ってほかの臓器へ広がり増殖することです。
すい臓がんは消化器系の臓器、重要な動脈やリンパ節に囲まれているため、再発・転移しやすい傾向があります。特に転移が多いのが肝臓、腹膜、肺、リンパ節、骨などです。
再発・転移したすい臓がんの治療は薬物療法が中心になります。膵管がんで術後化学療法の標準治療のS-1を服用中か終了直後に再発・転移したときには、S-1が効きにくい可能性があるので、薬物療法で取り上げた※①~⑤の標準治療のうち、①②④⑤のどれかに切り替えます。
術後化学療法が終わってから長期間経っているようなときには、同様に①~⑤の中から、体力、病状、本人の希望などによって適切な治療を選択します。
神経内分泌腫瘍(悪性度の低いもの)の再発・転移の場合には、エベロリムス、スニチニブ、あるいはストレプトゾシンで治療し、効果と副作用をみながらゲムシタビンやS-1を使う場合もあります。
痛み、黄疸、十二指腸の閉塞などの症状が出たときには症状を軽減する治療を行います。つらい気持ち、不安、痛み、不快な症状は我慢したり、一人で抱え込んだりせずに担当医や看護師、ソーシャルワーカーなどに伝えましょう。再発・転移してもできるだけ長く自分らしい生活が続けられるように、担当医と相談し、納得して治療を受けることが大切です。
※【5種類の標準化学(薬物)療法】①点滴で投与するゲムシタビンの単独療法②ゲムシタビンとエルロチニブの併用療法③内服薬のS-1(テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム)単独療法④FOLFIRINOX(オキサリプラチン、イリノテカン、フルオロウラシル/5‐FU、ロイコボリンカルシウム併用)療法⑤ゲムシタビンとナブパクリタキセルの併用療法
本コンテンツは認定NPO法人キャンサーネットジャパンが2017年10月に出版した「もっと知ってほしい膵臓がんのこと」より抜粋・転記しております。