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大腸癌とキイトルーダ(ペムブロリズマブ)について
皮膚癌、肺癌、胃癌に次いで抗PD-1抗体薬が期待されている癌種は大腸癌です。大腸癌は他の癌種と比べて効果のある抗癌剤、分子標的治療薬が揃っているため治療に困ることはありません。
いや、使える薬があり過ぎて何を使わないか?という贅沢な悩みはあります。このような状況にも関わらず、なぜ大腸癌の患者さんに抗PD-1抗体薬が期待されているのでしょうか?
それは、既存の治療薬には効果を示さない遺伝子異常を持つ患者さんが一定数の割合でいることが判っているからです。その遺伝子異常とは
MSI-H
と呼ばれるもので、マイクロサテライト不安定性陽性を意味します。この遺伝子異常はミスマッチ修復欠損が原因で発症すると考えられていて、ステージ4の大腸癌患者さんの約3-4%がこの遺伝子変異を持っていると言われています。
この遺伝子変異を持つ患者さんでは、抗癌剤のFOLFOX、FOLFIRIレジメン、分子標的治療薬のアバスチン(ベバシズマブ)、アービタックス(セツキシマブ)、ベクティビックス(パニツムマブ)などの薬剤の効果がありませんでした。
ですが、大腸癌ではマイクロサテライト不安定性検査の保険適応がされていないために、薬の効果不十分の原因が特定できていませんでした。このような背景のなか、2015年6月に彗星の如く現れたのが抗PD-1抗体薬
です。ペムブロリズマブはマイクロサテライト不安定性陽性の原因とされるミスマッチ修復欠損のある患者さんに対して劇的な効果を証明しました。ペムブロリズマブのその効果がミスマッチ修復欠損のない患者さんと比べて明らかであることが試験の早期の段階で証明したために、途中で試験中止になったほどです。
2018年3月30日、MSD株式会社は”局所進行性又は転移性の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)癌 ”に対する効能・効果で、抗PD-1抗体キイトルーダの製造販売承認事項一部変更承認申請を行ったことを自社のプレスリリースで公表しております。
MSI-Highを示す腫瘍は大腸がん以外にも、胃がん、膵臓がん、子宮内膜がん、乳がん、前立腺がん、膀胱がん、甲状腺がん等でも確認されております。臓器非特異的な、様々ながんの共通のバイオマーカーでの適応で承認されたがん治療薬は国内においてこれまでにないため、キイトルーダの製造販売承認事項一部変更承認申請は非常に注目されております。
キイトルーダ(ペムブロリズマブ)の薬剤概要
製品名
キイトルーダ
一般名
ペムブロリズマブ(pembrolizumab)
用法用量
<根治切除不能な悪性黒色腫>
通常、成人には、ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)として、1回2mg/kg(体重)を3週間間隔で30分間かけて点滴静注する。
<PD-L1陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌、再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫、がん化学療法後に増悪した根治切除不能な尿路上皮癌>
通常、成人には、ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)として、1回200mgを3週間間隔で30分間かけて点滴静注する
効能効果
1)根治切除不能な悪性黒色腫
2)PD-L1陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌
3)再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫
4)がん化学療法後に増悪した根治切除不能な尿路上皮癌
主な副作用
そう痒症、斑状丘疹状皮疹、倦怠感
製造承認日
2014年9月(国内・悪性黒色腫)
キイトルーダ(ペムブロリズマブ)の作用機序
ペムブロリズマブはヒト PD-1 に対する抗体であり、PD-1 とそのリガンド(PD-L1 及び PD-L2)との結合を阻害することにより、腫瘍特異的な細胞傷害性T細胞を活性化させ、腫瘍増殖を抑制すると考えられている
キイトルーダ(ペムブロリズマブ)の最新情報
1)PD-1 Blockade in Tumors with Mismatch-Repair Deficiency
概要
ミスマッチ修復欠損を持つ大腸がん患者、ミスマッチ修復能を持たない大腸がん患者、大腸がん以外のミスマッチ修復欠損を持つ癌患者に対してペンブロリズマブを投与して、その有効性(免疫関連客観的奏効率など)を検証した第二相試験。
出典
The New England Journal of Medicine
配信日
2015年6月25日
キイトルーダ(ペムブロリズマブ)の口コミ
医師のコメント
Rather than specifying organ, FDA approves 1st drug based on markers like MSI-H or mismatch repair deficient (dMMR) https://t.co/xsWLAdo3nO
— C. Michael Gibson MD (@CMichaelGibson) 2017年5月23日
Important point: only about 5 percent of patients with metastatic colorectal cancer have MSI-H or dMMR tumors. https://t.co/BhFyr1IEuh
— Michael Fisch (@fischmd) 2017年5月23日
Full pembrolizumab in mCRC paper now out @NEJM #ASCO2015 #crcsm http://t.co/NTEsotWuuL
— Alok Khorana (@aakonc) 2015年5月30日
キイトルーダ、薬価収載まで薬剤無償提供って、レセプト切られるような使い方したらどうなるんだろ?(やらないけど)
— レ点 (@m0370) 2016年12月19日
その他医療関係者のコメント
FDA Review Continues for Pembrolizumab in MSI-H Cancer https://t.co/JIQnwJd8Fh #crcsm
— OncLive.com (@OncLive) 2017年3月10日
MSD、薬価基準未収載の「キイトルーダ」を無償提供。肺がんの承認取得受け。患者の緊急要望にできるだけ早く応えたいと同社。https://t.co/mnBA5X6Qq7
9月に承認取得した悪性黒色腫の適応での11月薬価収載を見送った経緯があり、肺がんと併せて2月収載が見込まれる。— 国際医薬品情報 (@IPI_editors) 2016年12月19日
キイトルーダ(ペムブロリズマブ)、部会で承認されても、11月の薬価の収載見送り。オプジーボの薬価の改定のゴタゴタが原因?https://t.co/kh1n5aaJzo
— ちばにゃん@社会復帰リハビリ中 (@cmy_rl) 2016年11月25日
Earlier this week, the @US_FDA approved pembrolizumab for MSI-H and mismatch repair deficient cancers https://t.co/yHrG61V65u
— OncLive.com (@OncLive) 2017年5月25日
キイトルーダ(ペムブロリズマブ)の治験情報
1)Special Combination of BBI608 and Pembrolizumab
治験の概要
標準化学療法の効果を示さないステージ4大腸癌患者に対してペムブロリズマブとナパブカシンを併用投与して有効性(免疫関連客観的奏効率)を検証する治験
治験の期限
2020年10月
治験の概要
ミスマッチ修復欠損もしくはマイクロサテライト不安定性陽性のあるステージ4大腸癌患者に対してペムブロリズマブを投与してPFS(無増悪生存期間)を検証する治験
治験の期限
2019年8月
参照
1)MSD株式会社リリース
2)大腸癌治療ガイドライン
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