監修:日本医科大学 勝俣範之 先生
治療はやり直しがきかないので、自分の納得のいく病院で
がんの検査や治療を受ける病院の目安として「がん診療連携拠点病院」がありますが、人によってがんが見つかる状況はさまざま。最初からがん診療連携拠点病院にかかれないこともあります。
結論からいえば、がんと診断された病院で治療をしなくてもかまいません。ほかの病院にかかりたいと考えている場合は、そのことを診断してもらった医師に正直に話し、自分の病状に合った病院や専門医に関する情報やアドバイス、あるいはかかりたいと考えている病院についての評価や意見などを求めてみましょう。患者さん本人が聞きづらい場合は、家族や友人などが代わりに尋ねるのもよいかもしれません。
治療する病院を選ぶ際には通いやすさも考慮したほうが賢明です。がんの治療は「手術を受けたら終わり」ではありません。手術に引き続き、薬物療法や放射線療法が行われることもあります。いずれも外来での治療が主流となっており、頻繁に通院しなければなりません。また、最初の治療から最低5年は経過観察のために定期的に診察・検査を受ける必要も出てきます。通いやすさは病院選びの重要なポイントの1つなのです。
「がん診療連携拠点病院」は二次医療圏(病床整備を行うための医療地域区分で複数の市町村を一単位とする)に1か所とされています。つまり、国から指定される病院の数にはかぎりがあります。大都市部では実力がある病院でもがん診療連携拠点病院に指定されないことも。医師の説明をよく聞き、提案された治療方針が標準治療(現時点で有効性や安全性が最も高いと科学的に証明されている治療法)と合致し、納得できるようなら、その病院での治療を検討してもよいでしょう。標準治療は、がん種ごとに作成されている「診療ガイドライン」に記載されています。
診断された病院で治療を受けてもよいと考えているけれど、ほかの病院の治療も気になる場合は「セカンドオピニオン」を利用する方法があります。セカンドオピニオンとは主治医以外の第三者の医師の意見を聞き、治療方針を決定する際の参考にするもので、患者さん本人だけでなく、家族などでも受けることができます。セカンドオピニオンと主治医の治療方針に対する意見が同じであれば安心して診断された病院で治療を受けられます。また、意見が異なる場合は、主治医にセカンドオピニオンの意見を伝えたうえで、提案された治療法が自分に合っている理由や根拠についてもう一度、丁寧な説明を求めてみましょう。
治療はやり直すことができないので、自分が納得のいく病院で受けることが大切です。病院選びに困ったときは「国立がん研究センターがん情報サービスサポートセンター」もしくは住んでいる地域のがん診療連携拠点病院に併設されている「がん相談支援センター」に相談するとよいでしょう。「がん相談支援センター」も患者さん本人だけでなく、家族なども相談可能です。