■この記事のポイント
・進行肺扁平上皮がんに対して、タキソテールにシスプラチンを併用するよりも、ネダプラチンを併用した方が生存期間が延長した。
・副作用はシスプラチンに比べて、ネダプラチンは悪心、食欲不振、疲労および腎毒性に対して低い発現率であった。
・肺癌学会のプレナリーセッション発表。今後、標準療法の1つとなりえる結果である。
11月26日~28日に実施した第56回日本肺癌学会学術集会のプレナリーセッション(本会議にて最も重要な演題発表の1つ)にて、「肺扁平上皮がんに対して、ドセタキセル(タキソテール)にネダプラチン(アクプラ)またはシスプラチン(ブリプラチン等)に併用した場合の効果と安全性を検討する第3相試験」の結果が、名古屋医療センターの坂 英雄医師より発表されました。
ネダプラチンは第2世代プラチナ製剤であり、シスプラチンと比べ悪心・嘔吐・腎障害軽減された薬剤となり、肺扁平上皮がんに対してネダプラチンとドセタキセルを使用した第2相試験では良好な効果と忍容性(毒性が許容できること)が示されました。
第3相試験では、実際にシスプラチンとドセタキセルの併用療法に対してより効果が示されるかを確認するために、ステージ3b~4の進行肺扁平上皮がん患者に対して、『ネダプラチン+ドセタキセルの併用(177人)』または『シスプラチン+ドセタキセルの併用(175人)』を使用した場合の効果と安全性を比較しています。
ポイントは以下の通り。
◆生存期間(中央値)
ネダプラチン+ドセタキセル:13.6か月
シスプラチン+ドセタキセル:11.4か月
→ネダプラチンの方が19%リスクを軽減した(統計学的にも証明;p=0.037)
◆1年後、2年後生存割合
ネダプラチン+ドセタキセル:55.9%(1年次)、23.1%(2年次)
シスプラチン+ドセタキセル:43.5%(1年次)、18.1%(2年次)
◆がんの進行を抑えた期間
ネダプラチン+ドセタキセル:4.9か月
シスプラチン+ドセタキセル:4.5か月
→ネダプラチンの方が17%リスクを軽減した(統計学的にも証明;p=0.05)
◆奏効率(がんが一定以上縮小した割合)
ネダプラチン+ドセタキセル:55.8%(うち腫瘍の消失は3/172名)
シスプラチン+ドセタキセル:53.0%(うち腫瘍の消失は1/168名)
◆有害事象
両者とも有害事象発生率は9割程度で変化なし。発現事象が異なる。
ネダプラチン+ドセタキセル:好中球現象、血小板減少が多く認められた。
シスプラチン+ドセタキセル:悪心、疲労、低ナトリウム血症、低カリウム血症が多く認められた。
*上記、「グレード3」と記載がありますが、正しくは「グレード3以上」となります。
上記結果より、坂医師は「ネダプラチンは肺扁平上皮がんの初回治療における新たな標準治療となりうることを示唆している」としめくくっていました。
なお、本研究結果は、The Lancet Oncology にも発表されています。
Nedaplatin plus docetaxel versus cisplatin plus docetaxel for advanced or relapsed squamous cell carcinoma of the lung (WJOG5208L): a randomised, open-label, phase 3 trial.
試験情報の詳細は以下の通り(UMIN-CTR)
化学療法未施行ⅢB/Ⅳ期・術後再発肺扁平上皮癌に対するネダプラチン+ドセタキセル併用療法とシスプラチン+ドセタキセル併用療法の無作為化比較第Ⅲ相臨床試験
記事:可知 健太
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