■この記事のポイント
・悪性胸膜中皮腫の治療に関する論文が世界5大医学誌ランセットに掲載。
・初回治療の標準治療であるシスプラチンとアリムタにアバスチンを上乗せすることによる効果を証明。
・治療バラエティがないがん種でのポジティブな報告。
・フランスの臨床試験結果。日本においてアバスチンの胸膜中皮腫の適応はないが。。。
2015年12月21日、世界5大医学誌の1つであるランセット(the Lancet)に「手術不可能な悪性胸膜中皮腫患者対象としてシスプラチン(ブリプラチン、ランダ等)とペメトレキセド(アリムタ)にアバスチンを上乗せしたときの効果を検証する第3相試験(MAPS trial)」の結果が掲載されました。
本試験はフランスで実施されており、手術根治が望めない悪性胸膜中皮腫患者448人に対して、「シスプラチン+ペメトレキセド;223人」または「シスプラチン+ペメトレキセド+ベバシズマブ;225人」にて治療を行った際の生存期間を比較することを主目的とした臨床試験となります。
*治療方法:シスプラチン(75mg/m2)+ペメトレキセド(500mg/m2)(+ベバシズマブ(15mg/kg))を3週間に1回投与し、最大6回繰り返す。
死亡リスクは23%軽減、生活の質に大きい変化はなし
ポイントは以下の通りです。
◆生存期間の中央値
シスプラチン+ペメトレキセド+ベバシズマブ群:18.8か月
シスプラチン+ペメトレキセド群:16.1か月
*リスクを23%軽減。統計学的にも証明(P=0.0167)。
◆がんの進行を抑えた期間の中央値
シスプラチン+ペメトレキセド+ベバシズマブ群:9.2か月
シスプラチン+ペメトレキセド群:7.3か月
*リスクを29%軽減。統計学的にも証明(P<0.0001)。
◆クオリティーオブライブ(生活の質)は以下の項目で変化なし
健康状態・身体機能、日常生活への影響、心理的状態、認知機能、社会生活への影響、症状、疲労、嘔気・嘔吐、痛み、呼吸困難、不眠、食欲不振、便秘、下痢、経済的事情
◆安全性
シスプラチンとペメトレキセドにベバシズマブを上乗せすることにより、循環器系の有害事象が増えるもののその他の有害事象に変化なし。
グレード3(中等度から重度)以上の
・心・血管系有害事象:0.9% → 28.8%(+ベバシズマブ)
・高血圧:0% → 23.0%(+ベバシズマブ)
・動脈および静脈血栓塞栓症:0.9% → 13.5%(+ベバシズマブ)
*ベバシズマブは血管内皮細胞増殖因子(VEGF)に対する抗体となるため、循環器系の副作用が特徴的に発現します。
Clinical trial.gov, number NCT00651456
注:日本において、ベバシズマブ(アバスチン)は悪性胸膜中皮腫に対する適応は取得していません。使用をご希望する際は主治医の指示に従ってください。
記事:可知 健太
この記事に利益相反はありません。