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濾胞性リンパ腫の初治療 抗CD20抗体オビヌツズマブと化学療法で3年無増悪生存率が約80% 2016 ASH

  • [公開日]2017.02.28
  • [最終更新日]2017.06.26

低悪性度の濾胞性リンパ腫(FL)患者の一次治療として、糖鎖改変型抗CD20モノクローナル抗体オビヌツズマブ(商品名Gazyva)と化学療法の併用は、やはりCD20に結合するヒト・マウスキメラ型モノクローナル抗体であるリツキシマブ(商品名リツキサン)と化学療法の併用と比べ、増悪リスク、または死亡リスクが34%低下した。英国Kings College病院のRobert E. Marcus氏らが、第3相試験(GALLIUM、NCT01332968)の中間結果を2016年12月の米国血液学会(ASH)で発表し、「オビヌツズマブを含むFLの治療は、今やファーストラインの1つとの認識だ」とコメントした。2016年12月5日のOncLiveの記事を紹介する。

Frontline Obinutuzumab Significantly Improves PFS in Follicular Lymphoma(ONCLIVE, Monday, Dec 05, 2016)

目次

米国食品医薬品局(FDA)は2016年にオビヌツズマブを承認

オビヌツズマブはB細胞の発現するCD20に結合する糖鎖改変型モノクローナル抗体で、米国や欧州など海外では濾胞性リンパ腫(FL)、および慢性リンパ性白血病(CLL)を対象として承認されている(商品名Gazyva/Gazyvaro)。FLの一次治療は適応とされておらず、リツキサンを含む治療で奏効しない、あるいは同治療後に再発した患者を対象に、オビヌツズマブとベンダムスチン(商品名トレアキシン)の併用療法後、オビヌツズマブ単剤を投与する治療法である。日本ではFLを含む非ホジキンリンパ腫(NHL)の患者を対象とする第3相試験が実施されており、国際共同試験GALLIUMにも参加している。

未治療濾胞性リンパ腫対象 「リツキサン+CHOP/CVP/ベンダムスチン」と「オビヌツズマブ+CHOP/CVP/ベンダムスチン」

試験GALLIUMは、低悪性度非ホジキンリンパ腫(NHL)患者を対象とする無作為化非盲検試験で、未治療の患者1401人が登録され、そのうち濾胞性リンパ腫(FL)患者は1202人(18歳以上、グレードIからグレードIIIa)であった。 FL患者をオビヌツズマブ群、またはリツキサン群に割り付け(各601人、601人)、両群とも一定期間に化学療法と併用した後、それぞれの抗CD20抗体を単剤で維持治療した。基礎治療の化学療法は各試験実施施設で適切に選択され、CHOPが57.1%、CVPが33.1%、トレアキシンが9.8%の患者に割り当てられた。CHOP、またはCVPとの併用療法は1サイクル21日として8サイクル、トレアキシンとの併用療法は1サイクル28日として6サイクルを実施した。オビヌツズマブは1000mgを1サイクル目のみ1日目、8日目、および15日目に、2サイクル以降は1日目に投与した。リツキサンは375mgを各サイクルの1日目に投与した。主要評価項目は無増悪生存(PFS)期間であった。

併用化学療法について

CHOPはシクロホスファミド(商品名エンドキサン)、ドキソルビシン(商品名アドリアシン)、ビンクリスチン(商品名オンコビン)に、ステロイドであるプレドニゾロン(商品名プレドニン)を組み合わせた併用化学療法、CVPはエンドキサン、オンコビン、およびプレドニンを組み合わせた併用化学療法で、いずれも非ホジキンリンパ腫(NHL)の代表的な化学療法である。リツキサンを組み入れた併用療法はそれぞれR-CHOP、R-CVPと呼ばれる。トレアキシンはDNAアルキル化薬で、低悪性度B細胞性NHL、マントル細胞リンパ腫(MCL)、および慢性リンパ性白血病(CLL)の適応で日本でも承認されている。

リツキサンに比べてオビヌツズマブが無増悪生存期間を29%リスク低下

追跡期間中央値34.5カ月において、無増悪生存(PFS)期間中央値は、試験者判定、第三者判定のいずれにおいてもオビヌツズマブ群がリツキサン群より有意に延長し、ハザード比HR)はそれぞれ0.66、0.71で、増悪リスクはそれぞれ34%、29%低下したことが示された。治療後3年間のPFS率は、試験者判定ではオビヌツズマブ群80%、リツキサン群73.3%、第三者判定ではそれぞれ81.9%、77.9%であった。

副次評価項目である全生存期間OS)中央値は群間有意差がなく、HRは0.75であった。治療後3年間の全生存率は、オビヌツズマブ群94%、リツキサン群92.1%であった。奏効率はそれぞれ88.5%、86.9%、そのうち完全奏効(CR)はそれぞれ19.5%、23.8%、部分奏効(PR)はそれぞれ69.1%、63.1%であった。血液、骨髄の一方、または両方に微小残存病変MRD)が検出されなかった患者の割合は、オビヌツズマブ群(92%)がリツキサン群(84.9%)と比べ有意に少なかった。

オビヌツズマブの安全性

グレード3以上の有害事象は、主に好中球減少症(オビヌツズマブ群43.9%、リツキサン群37.9%)、白血球減少症(各8.6%、8.4%)、発熱性好中球減少症(各6.9%、4.9%)、静注関連反応(各6.7%、3.7%)、および血小板減少症(各6.1%、2.7%)であった。

重篤な有害事象発現率は、オビヌツズマブ群46.1%、リツキサン群39.9%、有害事象を理由に治療を中止した患者の割合はそれぞれ16.3%、14.2%、有害事象に関連する死亡率はそれぞれ4%、3.4%であった。

未治療濾胞性リンパ腫でリツキサンに対する有意性を初めて証明した唯一の第3相試験

濾胞性リンパ腫(FL)は、非ホジキンリンパ腫(NHL)の中でも最も悪性度が低く、進行は緩徐だが再発を伴って確実に進行するため治癒不能とされ、再発のたびに治療するのが困難になっていく厄介な悪性リンパ腫である。病変が限局している時は放射線や化学療法の効果が比較的高いが、進行期になると抗がん剤が効きにくくなる。進行期の一般的な治療がリツキサンを含むR-CHOP、またはR-CVPである。

試験GALLIUM では、初めて治療を受けるFL患者において、R-CHOP、R-CVP、またはR-トレアキシンの併用療法後のリツキサン単剤治療と比べ、オビヌツズマブ- CHOP、オビヌツズマブ- CVP 、またはオビヌツズマブ-トレアキシンの併用療法後のオビヌツズマブ単剤治療が無増悪生存(PFS)期間を有意に延長し、リツキサンを含む治療と変わらない忍容性が確認された。

未治療FLを対象とする第1相試験

米国FDAによるFLを適応とするオビヌツズマブの承認は、トレアキシンとの併用療法後のオビヌツズマブ単剤の維持治療で、その前にリツキサンを含む治療で奏効しないか、治療後再発した患者が対象であるが、GALLIUM以外にも初治療を試みた試験成績も報告されている。

2016年6月の欧州血液学会(EHA)では、未治療のFL患者81人を対象とする第1相試験(GAUDI、NCT00825149)が発表された。GALLIUMと同様、オビヌツズマブとトレアキシン、またはCHOPの併用療法後、オビヌツズマブ単剤の維持治療を実施した結果、治療後3年間の無増悪生存(PFS)率はそれぞれ90%、89%で、安全性に問題はなかった。やはりFLの初治療としての有用性が示唆されている。

Minimal Residual Disease in Patients with Follicular Lymphoma Treated with Obinutuzumab or Rituximab As First-Line Induction Immunochemotherapy and Maintenance in the Phase 3 GALLIUM Study(ASH2016,abstract613)

記事:川又 総江&可知 健太

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