プログラム細胞死受容体1(PD-1)を標的とする抗体ニボルマブ(商品名オプジーボ)と、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA4)を標的とする抗体イピリムマブ(商品名ヤーボイ)の併用療法が、2016年1月、切除不能または転移性悪性黒色腫の適応拡大で米国食品医薬品局(FDA)により迅速承認された。無増悪生存(PFS)期間と全生存期間(OS)を主要複合エンドポイントとする第3相試験(CheckMate-067、NCT01844505)のデータを審査した結果としての承認であるが、承認を継続するためには引き続き検証試験を実施し、その有用性を証明していくことが要件とされている。
承認の根拠となった試験CheckMate-067は、すでに追跡期間が3年を超え、オプジーボ×ヤーボイ併用療法の有効性と安全性の長期持続性が検証された。2017年9月11日のNew England Journal of Medicineに論文が掲載された。
最新データで明らかになったのは、オプジーボなどPD-1標的の免疫チェックポイント阻害薬による生存ベネフィットが、併用療法でも単剤療法でもCTLA4標的の免疫チェックポイント阻害薬ヤーボイよりすぐれるということである。これは、本試験の最初の中間解析報告(2015年7月2日New England Journal of Medicine 373巻23頁)から一貫して認められている。そして、治療期間が3年経過した時点で、病勢進行により次の二次治療に移行した患者の割合は、オプジーボ×ヤーボイ併用療法後にオプジーボ単剤療法を続けた群(併用群)がオプジーボ単剤群、またはヤーボイ単剤群より少なかったことから、同併用療法後のオプジーボ単剤療法は安全に長期間継続可能であることが示された。
目次
病勢進行後の二次治療移行後にも影響力がある初回免疫療法
CheckMate-067は、2013年7月から2014年3月までに21カ国、137施設から患者登録され、未治療でステージ3もしくはステージ4の切除不能、または転移性の悪性黒色腫患者945例がオプジーボ×ヤーボイ併用群(314例)、オプジーボ単剤群(316例)、およびヤーボイ単剤群(315例)に割り付けられた。
各群の用法用量は、
・オプジーボ×ヤーボイ併用群:オプジーボ1mg/kg×ヤーボイ3mg/kgを3週ごとに4回→オプジーボ3mg/kg単剤で2週ごと
・オプジーボ単剤群:3mg/kgを2週ごと
・ヤーボイ単剤群:3mg/kgを3週ごと
両薬剤とも投与経路は静脈内で、病勢進行や許容不能の毒性が認められるか、あるいは患者本人による中止の要望がない限り治療を継続し、問題のある有害事象がなく一定の有益性が得られた患者は、試験者の判定により病勢進行後も投与を継続することを可能にした。
オプジーボ×ヤーボイ併用後オプジーボ単剤の初回治療3年で約6割は二次治療不要
その結果、データカットオフの2017年5月24日の時点で生存していたすべての患者は、追跡期間が36カ月に達していた。治療群別の追跡期間中央値は併用群38.0カ月、オプジーボ単剤群35.7カ月、ヤーボイ単剤群18.6カ月であった。病勢進行後の二次治療を受けた患者の割合は、それぞれ20%(62/313例)、31%(97/313例)、35%(108/311例)で、二次治療が全身薬物療法であったのはそれぞれ32%、46%、63%で、最も多く用いられた治療薬は、併用群ではBRAF阻害薬(13%)、オプジーボ単剤群では抗CTLA4抗体(28%)、ヤーボイ単剤群では抗PD-1抗体(43%)であった。
二次治療に移行していない患者と死亡した患者を除く解析対象において、次の全身薬物療法を受けるまでの期間中央値は、併用群(258例)では特定に至っておらず、オプジーボ単剤群(273例)では25.5カ月、ヤーボイ単剤群(267例)では8.1カ月であった。そして、カプラン-マイヤー法に基づくと、追跡3年の時点で二次治療に移行していない患者の割合は、併用群(59%)がヤーボイ単剤群(20%)より3倍近く多く、オプジーボ単剤群(45%)よりも多かった。
対ヤーボイ単剤群、併用群の増悪・死亡リスク57%減、全死因死亡リスク45%減
無増悪生存(PFS)期間中央値は、併用群(11.5カ月)がヤーボイ単剤群(2.9カ月)より有意に延長し(p<0.001)、増悪・死亡リスクは57%低下した(ハザード比[HR]=0.43)。さらに併用群は、オプジーボ単剤群(6.9カ月)と比較しても有意に延長し(p<0.001)、同リスクは45%低下した(HR=0.55)。カプラン-マイヤー法に基づく3年時点での無増悪生存(PFS)率は、併用群が39%、オプジーボ単剤群は32%、ヤーボイ単剤群が10%と算出された。 全生存期間(OS)中央値は、併用群では38.2カ月を超えて特定には至らず、オプジーボ単剤群では中央値37.6%、ヤーボイ単剤群では19.9カ月で確定した。ヤーボイ単剤群に対する死亡リスクの低下率は、併用群が45%(HR=0.55)、オプジーボ単剤群が35%(HR= 0.65)で、いずれも有意に延長したことが示された(ともにp<0.001)。カプラン-マイヤー法に基づく3年間の全生存率は、併用群が58%、オプジーボ単剤群が52%、ヤーボイ単剤群が34%と算出された。
併用群とオプジーボ単剤群、共通するオプジーボ期間を有する2群間比較を考察、ヤーボイ組み入れのメリットは?
本試験は、オプジーボ×ヤーボイ併用後オプジーボ単剤群とオプジーボ単剤群を直接比較する試験デザインではないため、記述的解析にとどまるが、併用群はオプジーボ単剤群と比べPFS に基づく増悪・死亡リスクが22%低下し(HR=0.78)、OSに基づく死亡リスクが15%低下したことが分かった(HR=0.85)。これらの生存ベネフィットは、BRAF変異の有無や転移ステージ、腫瘍病変の径や個数を因子とする層別解析でも一貫し、オプジーボのみで初回治療を受けた単剤群と比べ、初回治療に一定期間ヤーボイを組み入れた併用群の方が上回っていた。
PD-L1発現レベルは全生存期間の予測バイオマーカーとして説得力に欠ける~
ただ、PD-L1発現レベルが1%以上、5%以上の患者集団における全生存期間(OS)は、併用群とオプジーボ単剤群は同程度で差はなく、ハザード比(HR)はそれぞれ1.02、0.99であった。しかし、PD-L1発現レベル別の全奏効率はすべて、併用群(54%から85%)がオプジーボ単剤群(35%から58%)を上回った。そこで、PD-L1発現レベルの予測バイオマーカーとしての敏感度と特異度をみる受信者動作特性(ROC)曲線を用いて解析した結果、オプジーボを含む併用群、およびオプジーボ単剤群ともに、PD-L1のバイオマーカー妥当性は弱いことが判明した。
有害事象を理由とする治療中止でも併用療法の生存ベネフィットは損なわれず~
グレード3またはグレード4の有害事象は、併用群59%(184/313例)、オプジーボ単剤群21%(67/313例)、ヤーボイ単剤群28%(86/311例)に認められ、治療関連有害事象を理由とする治療中止率はそれぞれ30%(95/313例)、8%(24/313例)、14%(43/311例)であった。併用群では、4回中3回(中央値)の併用投与を受けた313例中123例(39.3%)が治療関連有害事象を理由に治療を中止したが、3年の時点で67%の患者は生存していた。
免疫介在性の有害事象の発現率は群間に差はなく、グレード3またはグレード4で最も多く発現したのは消化器症状(併用群15%、オプジーボ単剤群4%、ヤーボイ単剤群12%)であった。そのうち併用群は下痢の発現率が他の群より高かった(各9%、3%、6%)。グレード3またはグレード4の有害事象は、ガイドラインに準ずる適切な処置により大部分は3週から4週以内に回復した。
この記事に利益相反はありません。