支持・緩和療法の現場を舞台とする進行がん患者の意識調査で、担当医がコンピュータ画面を見ながら会話するよりも、患者の顔を見ながら会話する(face-to-face)方が良い印象を持つことが示された。2017年6月の米国臨床腫瘍学会(ASCO)で発表された二重盲検試験(NCT02957565)の結果で、明確な評価尺度と統計学的解析により検証された(Abstract 26)。
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患者と医師に扮する役者が対話する診察室の動画2つ、違うのは医師のまなざし
調査対象は18歳以上の進行がん患者120例で、90%は身体機能に全く問題がなく、全例が英語話者。同じ部屋、同じ脚本で役者が演じる診察場面を映した3分間の動画2種類を観てもらい、医師の配慮・共感性、意思疎通能力、および専門的能力に関する質問に対するスコア化した回答を取得した。一方の動画では、医師が患者の顔を見ながら耳を傾け、語りかけるface-to-face設定(1)、もう一方では医師がコンピュータ画面に視線を集中し、操作しながら会話する設定(2)である。患者役も医師役も試験の目的を知らされずに演じ、試験者は患者が観た(1)(2)の動画の順番を知らない。
その結果、3つすべての質問で設定(1)のスコア中央値の方が設定(2)よりも良い印象を示し、配慮・共感性(スコア0が最良:9対20)、意思疎通能力(スコア0が最悪:65対54)、専門的能力(スコア0が最悪:19対14)いずれも統計学的有意差が認められた(各p=0.0003、p=0.0001、p=0.013)。2つの動画を観た後で医師に対する全般的印象を質問したところ、120例中86例(72%)が設定(1)のface-to-faceに好感度を抱いたことが分かった。
「最終的に、患者にとっての有益性は医師との信頼関係に基づく心理状態に依存する。患者は直接寄り添ってくれているとの実感が欲しい」とASCOで発表したAli Haider氏(米国テキサス大学MDアンダーソンがんセンター)。「診察室に第三者の存在を望んでいるのは間違いないが、それはコンピュータではないということがはっきりした」
リテラシーの高い患者が抱く印象は?
今回と同じ調査を早期のがん患者を対象に行っても同じ結果となった可能性は高い。しかし、コンピュータについて一定の知識や技術を予め備えている若い患者を対象とすれば結果は変わってくる可能性が高い。
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