・本試験は、2016年1月より7月までに慶應義塾大学病院またはその関連病院にて抗PD-1抗体薬であるオプジーボの治療を受けた進行性非小細胞肺がん患者を対象に、オプジーボの有効性、安全性、また有効性に関連する患者因子をリアルワールドデータに基づきに後ろ向きに解析した多施設共同観察研究である
・本試験の結果、客観的奏効率は17.0%(95%信頼区間:12.0%-24.0%)、無増悪生存期間(PFS)中央値は58日(95%信頼区間:50-67日)、全グレードの治療関連有害事象(TRAE)発症率は45.1%であった
・オプジーボに対する治療応答性が良好である患者背景はEGFR/ALK遺伝子変異陽性群よりも陰性群、前治療歴として放射線治療歴のない群よりもある群であることが本試験より示唆された
2018年5月、医学誌『Clinical Lung Cancer』にて治療歴のある進行性非小細胞肺がん患者を対象にした抗PD-1抗体薬であるニボルマブ(商品名オプジーボ;以下オプジーボ)の有効性、安全性をリアルワールドデータに基づきに後ろ向きに解析した多施設共同観察研究の結果が慶應義塾大学医学部呼吸内科・小林慧悟氏らにより公表された。
本試験は、2016年1月より7月までに慶應義塾大学病院またはその関連病院にてオプジーボによる治療を受けた進行性非小細胞肺がん患者(N=142人)を対象に、オプジーボの有効性、安全性、また有効性に関連する患者因子をリアルワールドデータに基づきに後ろ向きに解析した多施設共同観察研究である。
本試験の患者背景は下記の通りである。年齢中央値は67歳(34-85歳)、75歳以上の患者26.8%(N=38人)。性別は男性74.6%(N=100人)。ECOG Performance Statusはスコア0が30.3%(N=43人)、スコア1が53.5%(N=76人)、スコア2が10.6%(N=15人)、スコア3が5.6%(N=8人)。喫煙歴ありの患者79.6%(N=113人)。
臨床病期はステージIIIAが13.3%(N=19人)、ステージIIIBが14.8%(N=21人)、ステージIVが59.9%(N=85人)。中枢神経系(CNS)転移ありの患者19.0%(N=27人)。遺伝子変異ステータスはEGFR陽性11.3%(N=16人)、ALK陽性2.1%(N=3人)、不明17.6%(N=25人)。前治療歴は1レジメン40.1%(N=57人)、2レジメン以上は59.9%(N=85人)。放射線療法の治療歴ありの患者31.7%(N=45人)。
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果、客観的奏効率は17.0%(95%信頼区間:12.0%-24.0%)、その内訳は部分奏効(PR)17.0%、病勢安定(SD)45.0%、病勢進行(PD)38.0%であった。
また、全患者群における無増悪生存期間(PFS)中央値は58日(95%信頼区間:50-67日)であり、患者背景の違いにより無増悪生存期間(PFS)の差が確認された結果は下記の通りである。EGFR/ALK遺伝子変異ステータス別の無増悪生存期間(PFS)中央値はEGFR/ALK遺伝子変異陽性群49日に対して陰性群63日、EGFR/ALK遺伝子変異陽性群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクが増加(ハザード比:1.9,95%信頼区間:1.1-5.2,P=0.029)した。
EGFR/ALK遺伝子変異ステータス以外にも、前治療歴として放射線療法の治療歴のある患者の無増悪生存期間(PFS)中央値は82日に対して放射線療法の治療歴のない患者は52日、放射線療法の治療歴のある患者で無増悪生存期間(PFS)を改善したが、統計学有意な差は確認されなかった。
なお、治療応答性においてはEGFR/ALK遺伝子変異陽性群よりも陰性群、前治療歴として放射線治療歴のない群よりもある群において統計学有意な差がそれぞれ確認された(P<0.05,P=0.012)。
一方の安全性として、全グレードの治療関連有害事象(TRAE)発症率は45.1%(N=64人)であり、その内訳は下記の通りである。食欲不振14.8%(N=21人)、甲状腺機能低下症10.6%(N=15人)、皮膚障害7.0%(N=10人)、間質性肺炎5.6%(N=8人)、肝機能障害4.2%(N=6人)、便秘3.5%(N=5人)、貧血2.8%(N=4人)、下痢2.8%(N=4人)、腎機能障害2.8%(N=4人)などであった。
以上の後ろ向き多施設共同観察研究の結果より小林慧悟氏らは以下のように結論を述べている。”本試験において確認された客観的奏効率、無増悪生存期間(PFS)などの有効性、治療関連有害事象(TRAE)発症率などの安全性は既存の臨床試験の結果と同様のものでした。また、オプジーボに対する治療応答性が良好である患者背景はEGFR/ALK遺伝子変異陰性、前治療歴として放射線療法の治療歴のある患者であることが本試験より示唆されました。”
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