2017年12月9日から12日までアメリカ合衆国ジョージア州アトランタで開催された米国血液学会議(ASH2017)にて骨髄異形成症候群(MDS)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、急性骨髄性白血病(AML)患者に対してキザルチニブ+アザシチジン(商品名ビダーザ;以下ビダーザ)併用療法、もしくはキザルチニブ+低用量シタラビン併用療法の有効性、安全性を検証した第I/II相試験の結果がアメリカ合衆国・テキサス州にあるMD Anderson Cancer Center所属のMahesh Swaminathan氏らにより公表された。
本試験の第I相段階ではハイリスク再発難治性骨髄異形成症候群(MDS)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、またはFLT3-ITD変異の有無に関係のない急性骨髄性白血病(AML)患者を対象(N=12人)にしており、第II相段階では未治療の骨髄異形成症候群(MDS)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、または急性骨髄性白血病(AML)患者を対象(N=49人)にしている。
本試験では上記患者に対してキザルチニブ+ビダーザ併用療法(N=38人)、もしくはキザルチニブ+低用量シタラビン併用療法(N=23人)を投与し、第I相段階での主要評価項目としては用量制限毒性(DLT)、第II相段階では客観的奏効率(ORR)などを検証した第I/II相試験である。なお、第II相段階でのFLT3-ITD変異を有する急性骨髄性白血病(AML)患者に限って、一次治療を受けている患者も対象にしている。
本試験の第I相段階での主要評価項目である用量制限毒性(DLT)は、1日1回キザルチニブとして60mgが最大耐量(MTD)であることを示した。また、第I相段階での主要評価項目である客観的奏効率(ORR)は73%(N=43人,キザルチニブ+ビダーザ併用療法群29人,キザルチニブ+低用量シタラビン併用療法群14人)を示した。また、その内訳としては完全奏効(CR)10人、血小板の回復は不十分だがそれ以外は完全寛解(CRp)6人、血液の回復は不十分だが骨髄では完全寛解(CRi)20人、部分奏効(PR)2人であり、奏効を示した43人のうち5人が微小残存病変(MRD)陰性であった。
また、前治療歴のある47人の患者における客観的奏効率(ORR)は68%を示し、その内訳としては完全奏効(CR)4人、血小板の回復は不十分だがそれ以外は完全寛解(CRp)4人、血液の回復は不十分だが骨髄では完全寛解(CRi)19人、血液学的改善効果(HI)3人、部分奏効(PR)2人であった。一方、前治療歴のない12人の患者における客観的奏効率(ORR)は92%を示し、その内訳としては完全奏効(CR)6人、血小板の回復は不十分だがそれ以外は完全寛解(CRp)2人、血液の回復は不十分だが骨髄では完全寛解(CRi)1人、血液学的改善効果(HI)1人であった。そして、FLT3-ITD変異を有する患者(N=55人)における客観的奏効率(ORR)は75%を示した。
一方の安全性として、グレード3または4の有害事象(AE)は下記の通りである。低カリウム血症(N=19人)、低カルシウム血症(N=2人)、低血圧(N=9人)、低リン酸血症(N=9人)、低ナトリウム血症(N=9人)、低カルシウム血症(N=5人)、高ビリルビン血症(N=7人)、アラニンアミノ基転移酵素(ALT)上昇(N=8人)、アスパラギン酸アミノ基転移酵素(AST)上昇(N=4人)、腹痛(N=3人)、脳内出血(N=2人)、高ナトリウム血症(N=2人)、高血圧(N=2人)、
高マグネシウム血症(N=4人)、下痢(N=8人)、脱水(N=2人)、呼吸不全(N=6人)、高血糖(N=1人)、QTcF延長(N=3人)、心房細動(N=4人)、心膜滲出液(N=1人)であった。
以上の第I/II相試験の結果より、骨髄異形成症候群(MDS)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、急性骨髄性白血病(AML)患者に対するキザルチニブ+ビダーザ併用療法、キザルチニブ+低用量シタラビン併用療法の有効性、安全性が証明された。特に、FLT3-ITD変異を有する急性骨髄性白血病(AML)患者は早期に再発し易く、その予後も悪いため、本試験で示した客観的奏効率(ORR)の高さはキザルチニブ単剤療法よりも効果が期待できるとMahesh Swaminathan氏らは述べている。
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