2018年2月22日、医学誌『JAMA Oncology』にて慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫患者に対するブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤であるイブルチニブ(商品名イムブルビカ;以下イムブルビカ)単剤療法により完全奏効(CR)を得る症例の予後因子を検証したプール解析の結果がChao Family Comprehensive Cancer Center・Susan M. O’Brien氏らにより公表された。
今回のプール解析は2つの臨床試験の結果に基いている。1つ目の臨床試験であるPCYC-1102試験(NCT01105247)は治療歴のないまたは再発難治性慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫患者に対して1日1回イムブルビカ420mg/840mg単剤療法を投与し、主要評価項目として治療関連有害事象(TRAE)発症率を検証したシングルアームオープンラベルの第I/II相試験である。
2つ目の試験であるPCYC-1112試験(NCT01578707)は再発難治性慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫患者に対して1日1回イムブルビカ420mg単剤療法を投与する群、またはオファツムマブ(商品名アーゼラ;以下アーゼラ)単剤療法を投与する群に無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として全生存期間(OS)などを比較検証した国際多施設共同オープンラベルの第III相試験である。
以上の2つの臨床試験より登録された327人の患者背景は下記の通りである。年齢中央値67歳(30-86歳)、男性69.4%(N=227人)、ECOG Performance Status(PS)状態1以上は55.7%(N=182人)。長径5cm以上のリンパ節塊として定義されたバルキー病変を有する患者56.6%(N=185人)、病期ステージ進行期に該当する患者56.3%(N=184人)、β2-ミクログロブリン濃度3.5mg/L以上の患者59.3%(N=194人)。染色体異常11q(ATM 座)を有する患者30.3%(N=99人)、17p(p53 座)29.4%(N=96人)、染色体異常免疫グロブリン重鎖(IgVH)遺伝子変異陰性58.7%(N=192人)。治療歴としては1レジメン11.6%(N=38人)、2レジメン24.8%(N=81人)、3レジメン以上54.1%(N=177人)、そして治療歴のない患者は9.5%(N=13人)。なお、再発難治性慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫患者の前治療歴レジメン中央値は3(0-12)である。
以上の背景を有する患者に対してイムブルビカ単剤療法を投与したフォローアップ期間中央値26.4ヶ月(0.3-55.6ヶ月)時点における結果、完全奏効(CR)を達成した患者は9.8%(N=32/327人)を示した。その内訳は、PCYC-1102試験に登録された再発難治性患者11.9%(N=12/101人)、治療歴のない患者25.8%(N=8/31人)、PCYC-1112試験に登録された再発難治性患者6.2%(N=12/195人)。なお、完全奏効(CR)期間中央値は14.7ヶ月(4.6-47.1ヶ月)であった。
そして、完全奏効(CR)を得る症例の予後因子を検証した単変量解析結果では、バルキー病変、病期の進行ステージ、前治療歴の数、β2-ミクログロブリン濃度の4つの予後因子が完全奏効(CR)を達成する割合に統計学的有意な影響を与えることを示した。多変量解析結果では、前治療歴のない患者は少なくとも1レジメン以上の前治療歴のある患者に比べて完全奏効(CR)を達成するオッズ比は2.65(95%信頼区間:1.01〜6.95,P = 0.047)、バルキー病変のない患者はバルキー病変のある患者に比べて完全奏効(CR)を達成するオッズ比は4.97(95%信頼区間:1.91-12.91,P = 0.001)と高かった。
以上のプール解析の結果より、Susan M. O’Brien氏らは以下のように結論を述べている。”イムブルビカ単剤療法を投与することで完全奏効(CR)を達成できる予後因子は治療歴がなく、かつバルキー病変のない慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫患者です。バルキー病変のない新規慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫患者に対してイムブルビカ単剤療法を投与した完全奏効率(CR)は28.0%(N=7/25人)を示しました。なお、染色体異常である11q(ATM 座)、17p(p53 座)、染色体異常免疫グロブリン重鎖(IgVH)の予後因子は完全奏効率(CR)に関連していませんでした。”
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