10月19日から23日までドイツ・ミュンヘンで開催されたESMO2018で、再発/転移性の頭頸部扁平上皮がんに対する1次治療として、抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(キイトルーダ)単剤療法、キイトルーダと化学療法の併用療法は、抗EGFR抗体セツキシマブ(アービタックス)と化学療法の併用療法よりも全生存期間(OS)を延長できることが、フェーズ3試験 KEYNOTE-048で示された。
KEYNOTE-048試験は、局所治療で治癒不能な再発/転移性の中咽頭、口腔、喉頭の扁平上皮がん患者を対象に行われた、パフォーマンスステータス 0-1、PD-L1発現測定のために腫瘍組織が得られていること、中咽頭のHPV(ヒトパピローマウィルス:p16)の状態が分かっていることが臨床試験参加可能な基準だった。
参加した患者は以下のように、1対1対1で割り付けられ、PD-L1発現、p16(陽性と陰性)、全身状態(パフォーマンスステータス 0とPS 1)で層別化されていた。
・キイトルーダ単剤投与群(P群、3週おきにペムブロリズマブ200mgを35サイクルまで投与)
・キイトルーダ+化学療法群(P+C群、3週間を1サイクルとして1日目にペムブロリズマブ200mg投与とカルボプラチンAUC5またはシスプラチン100mg/㎡、1日あたり1000mg/㎡の5-FUを4日間投与を6サイクル、その後はペムブロリズマブ200mgを35サイクルまで投与)
・アービタックス+化学療法群(アービタックス+C群、アービタックスを1回目だけ400mg/㎡、その後は毎週250mg/㎡投与、3週おきにカルボプラチンAUC5またはシスプラチン100mg/㎡、1日あたり1000mg/㎡の5-FUを4日間投与を6サイクル、その後はアービタックス250mg/㎡を毎週投与)
主要評価項目は、「PD-L1 combined positive score(CPS)20以上」「CPS1以上」「全体」の患者の全生存期間および盲検下独立中央判定委員会の評価による無増悪生存期間であった。
副次評価項目は「CPS20以上」「CPS1以上」「全体」の患者の6カ月無増悪生存率、1年無増悪生存率、奏効率、QOLの変化、安全性であり、探索的項目は治療奏効期間であった。
2015年4月1日から2017年1月17日までに882人が以下のように無作為に割り付けられた。患者背景に大きな差は認められなかった。
・P群には301人が割り付けられ300人が投薬を受けた。
・P+C群には281人が割り付けられ276人が投薬を受けた。
・アービタックス+C群には300人が割り付けられ、287人が投薬を受けた。
試験の結果は「P群とアービタックス+C群を比較した結果」と「P+C群とアービタックス+C群を比較した結果」にわけて発表された。内容は以下の通り。
CPS 20以上
・CPS20以上の患者P群(133人)の全生存期間中央値は14.9カ月、アービタックス+C群(122人)は、10.7カ月(ハザード=0.61)、39% P群で死亡リスク有意に減少させた。
・1年全生存率はP群56.9%、アービタックス+C群44.9%、2年全生存率はP群38.3%、アービタックス+C群22.1%
・無増悪生存中央値は、CPS20以上の患者P群が3.4カ月、アービタックス+C群5.0カ月(ハザード比=0.99)で差はなかったが、後になるほどP群の効果が上になり、1年無増悪生存率はP群22.9%、アービタックス+C群12.4%、2年無増悪生存率はP群14.9%、アービタックス+C群4.8%
CPS 1以上
・CPS1以上の患者P群(257人)の全生存期間中央値は12.3カ月、アービタックス+C群(255人)は、10.3カ月(ハザード比=0.78)、22% P群で死亡リスクを有意に減少させた。
・1年全生存率はP群51.0%、アービタックス+C群が43.6%、2年全生存率はP群30.2%、アービタックス+C群18.6%
・CPS1以上の患者の無増悪生存期間中央値 P群3.2カ月、アービタックス+C群が5.0カ月だったが1年無増悪生存率はP群19.6%、アービタックス+C群11.9%、2年無増悪生存率はP群11.2%、アービタックス+C群5.4%
奏効率
・CPS20以上の患者 P群23.3%、アービタックス+C群が36.1%
・CPS1以上の患者 P群が19.1%、アービタックス+C群が34.9%
どちらもセツキシマブ+C群が高かったが、完全奏効は、P群の方が多かった。
治療奏効期間中央値
・CPS20以上の患者 P群が20.9カ月、アービタックス+C群が4.2カ月
・CPS1以上の患者 P群が20.9カ月、アービタックス+C群が4.5カ月
大幅にP群が長かった。
・全患者におけるP+C群の全生存期間中央値13.0カ月、アービタックス+C群10.7カ月(ハザード比=0.77)、P+C群で死亡リスクを有意に減少させた。1年全生存率はP群53.0%、アービタックス+C群43.9%、2年全生存率はP群29.0%、アービタックス+C群18.7%
・全患者におけるP+C群の無増悪生存中央値は、4.9カ月、アービタックス+C群5.1カ月(ハザード比=0.92)、7カ月目頃、無増悪生存期間の効果はほぼ同等となり、その後、P+C群が上になった。1年無増悪生存率はP群16.7%、アービタックス+C群12.1%、2年無増悪生存率はP群9.8%、アービタックス+C群4.6%
・全患者における奏効率P+C群35.6%、アービタックス+C群が¥36.3%とほぼ同等だったが、完全奏効はP+C群の方が多かった。
・治療期間中央値は、P+C群が6.7カ月、アービタックス+C群が4.3カ月、P+C群の方が長かった。
安全性については、この臨床試験において想定外の毒性は認められなかった。
以上の結果からキイトルーダ単剤療法、キイトルーダと化学療法の併用療法が新たな標準治療のひとつとなることが示された。
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