・Selinexor+ベルケイド+デキサメタゾン併用療法の有効性、安全性を検証した第1/2相試験の結果が公表された
・対象は治療歴のある再発難治性多発性骨髄腫患者だった
・プロテアソーム阻害薬に耐性を示した患者を含め、良好な客観的奏効率を示し、忍容性も良好だった
2018年12月13日、医学誌『blood』にて、治療歴のある再発難治性多発性骨髄腫患者に対する経口選択的核外輸送タンパク質阻害薬(SINE)であるSelinexor+プロテアソーム阻害薬であるボルテゾミブ(商品名ベルケイド;以下ベルケイド)+デキサメタゾン併用療法(SVd)の有効性、安全性を検証した第1/2相試験(NCT02343042)の結果がCharbonneau Cancer Research InstituteのNizar J. Bahlis氏らにより公表された。
本試験は、治療歴のある再発難治性多発性骨髄腫患者(N=42人)に対してSelinexor 60/80/100mg+ベルケイド1.3mg/m2+デキサメタゾン20mg併用療法を投与し、主要評価項目として用量制限毒性(DLT)、第2相試験推奨用量(RPIID)、客観的奏効率(ORR)、治療関連有害事象(TRAE)発症率などを検証した多施設共同非盲検下の第1/2相試験である。なお、投与スケジュールは下記の3通りである。
・コーホート1
35日を1サイクルとして1、8、15、22、29日目にSelinexor 80/100mg+1、8、15、22日目にベルケイド1.3mg/m2+1、8、15、22、29日目にデキサメタゾン40mg
・コーホート2
21日を1サイクルとして1、8、15日目にSelinexor 80mg+1、4、8、11日目にベルケイド1.3mg/m2+1、8、15日目にデキサメタゾン40mg
・コーホート3
35日を1サイクルとして1、3、8、10、15、17、22、24日目にSelinexor 60/80mg+1、8、15、22日目にベルケイド1.3mg/m2+1、3、8、10、15、17、22、24、29、31日目にデキサメタゾン40mg
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値は64歳(43-75歳)、65歳以下が52%、66-74歳が45%、75歳以上が3%。性別は男性55%、女性45%。人種は白人88%、黒人5%、ヒスパニック系2%、その他5%。ECOG Performance Statusはスコア0が14%、スコア1が83%、スコア2が2%。多発性骨髄腫診断時より治療開始までの経過年数中央値は5年(1-19年)。
ISS病期分類はステージIが36%、ステージIIが21%、ステージIIIが26%。染色体異常のステータスは標準リスクが48%、ハイリスク(del17p、t(4;14)、t(14;16))が9%、不明が43%。末梢神経障害の既往歴はありが52%、なしが48%。前治療歴中央値は3レジメン(1-11レジメン)、プロテアソーム阻害薬に耐性を示した患者50%、免疫調節薬(iMids)に耐性を示した患者81%、抗CD38モノクローナル抗体薬に耐性を示した患者12%、プロテアソーム阻害薬/免疫調節薬(iMids)に耐性を示した患者45%。
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。最も多くの患者で確認された全グレードの治療関連有害事象(TRAE)は吐き気62%、疲労感60%、食欲減退60%、下痢43%、嘔吐31%、体重減少19%、視覚障害19%、末梢神経障害10%など。
グレード3以上の血液関連有害事象(TRAE)は血小板減少症50%、好中球減少症26%、貧血19%。グレード3以上の非血液関連有害事象(TRAE)は疲労感14%、下痢7%、吐き気5%、低ナトリウム血症5%、食欲減退2%、せん妄2%、吐き気2%など。
そして、主要評価項目である用量制限毒性(DLT)の発現は確認されず、第2相試験推奨用量(RPIID)は35日を1サイクルとして1、8、15、22、29日目にSelinexor 100mg+1、8、15、22日目にベルケイド1.3mg/m2+1、8、15、22、29日目にデキサメタゾン40mgに決定された。
もう1つの主要評価項目である客観的奏効率(ORR)は63%(95%信頼区間:47%-76%,N=25/40人)、その内訳は完全奏効(CR)8%、最良奏効(VGPR)23%、部分奏効(PR)33%を示した。また、第2相試験推奨用量(RPIID)の患者群における客観的奏効率(ORR)は58%(95%信頼区間:35%-71%,N=14/24人)、その内訳は完全奏効(CR)4%、最良奏効(VGPR)21%、部分奏効(PR)33%を示した。
その他、プロテアソーム阻害薬に耐性を示した患者群における客観的奏効率(ORR)は43%(95%信頼区間:24%-63%,N=9/21人)、その内訳は完全奏効(CR)5%、最良奏効(VGPR)19%、部分奏効(PR)19%を示した。また、プロテアソーム阻害薬に耐性を示していない患者群における客観的奏効率(ORR)は84%(95%信頼区間:62%-94%,N=16/19人)、その内訳は完全奏効(CR)11%、最良奏効(VGPR)26%、部分奏効(PR)47%を示した。
以上の第1/2相試験の結果よりNizar J. Bahlis氏らは以下のように結論を述べている。”治療歴のある再発難治性多発性骨髄腫患者に対するSVd療法はプロテアソーム阻害薬に耐性を示した患者を含め、良好な客観的奏効率(ORR)を示し、忍容性も良好でした。”
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