・閉経後のPIK3CA遺伝子変異陽性エストロゲン受容体陽性進行性乳がん患者対象の第Ib試験
・アルペリシブ+フルベストラント併用療法の最大耐用量、用量制限毒性などを検証
・副作用は管理可能であり、PIK3CA遺伝子野生型に比べ変異型で高い抗腫瘍効果あり
2018年12月13日、医学誌『JAMA Oncology』にてホルモン療法治療中または治療後に病勢進行した閉経後のPIK3CA遺伝子変異陽性エストロゲン受容体陽性進行性乳がん患者に対するPI3K阻害薬であるアルペリシブ(BYL719)+フルベストラント併用療法の安全性、有効性を検証した第Ib試験(NCT01219699)の結果がMassachusetts General Hospital Cancer Center・Dejan Juric氏らにより公表された。
本試験は、ホルモン療法治療中または治療後に病勢進行した閉経後のPIK3CA遺伝子変異陽性または陰性エストロゲン受容体陽性進行性乳がん患者(N=87人)に対して1日1回アルペリシブ300~400mg+フルベストラント500mg併用療法を投与し、主要評価項目として最大耐用量(MTD)、用量制限毒性(DLT)、副次評価項目として治療関連有害事象(TRAE)発症率、無増悪生存期間(PFS)、客観的奏効率(ORR)などを検証したシングルアーム多施設共同の第Ib相試験である。
本試験が実施された背景として、エストロゲン受容体陽性進行性乳がん患者に対する標準治療はホルモン単剤療法、またはmTOR阻害薬、CDK4/6阻害薬併用療法であるが、その治療を受けた患者でも治療抵抗性、再発を示す。また、エストロゲン受容体陽性進行性乳がん患者の約40%はPIK3CA遺伝子変異陽性のためPI3Kを阻害する作用機序を有する治療薬の効果は期待できる。以上の背景より、閉経後エストロゲン受容体陽性進行性乳がん患者に対するPI3K阻害薬アルペリシブ+フルベストラント併用療法の安全性、有効性が本試験より検証された。
本試験に登録された患者背景は以下の通りである。
・年齢中央値は58歳(37-79歳)
・ECOG Performance Statusはスコア0が45%、スコア1が53%、スコア2が1%、不明が1%
・診断時の進行病期はステージI/Iaが1%、ステージII/IIa/IIb/IIcが37%、ステージIII/IIIa/IIIb/IIIcが14%、ステージIVが26%
・前治療歴は5レジメン(1-16レジメン)
・前治療歴の種類はmTOR阻害薬が24%、フルベストラントが45%、化学療法が91%。PIK3CA遺伝子ステータスは変異型60%、野生型38%、不明2%
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は以下の通りである。本試験の主要評価項目である最大耐用量(MTD)は1日1回アルペリシブ400mgとして決定された。なお、用量制限毒性(DLT)は1日1回アルペリシブ300mg、350mgの治療を受けた患者では認められず、1日1回アルペリシブ400mgの治療を受けた患者の1人でグレード2の下痢、吐き気、疲労、食欲減退が確認された。
そして、1日1回アルペリシブ400mgの治療を受けた群における30%以上の患者で確認された主な全グレードの治療関連有害事象(TRAE)は下痢59%、吐き気50%、高血糖49%、食欲減退47%、疲労36%、嘔吐33%であった。
また、PIK3CA遺伝子ステータス別の副次評価項目である客観的奏効率(ORR)はPIK3CA遺伝子変異陽性群29%(95%信頼区間:17%-43%)に対して陰性群0%を示した。また、PIK3CA遺伝子ステータス別の無増悪生存期間(PFS)中央値はPIK3CA遺伝子変異陽性群9.1ヶ月(95%信頼区間:6.6-14.6ヶ月)に対して陰性群4.7ヶ月(95%信頼区間:1.9-5.6ヶ月)を示した。
以上の第Ib相試験の結果より、Dejan Juric氏は以下のように結論を述べている。“PIK3CA遺伝子変異陽性エストロゲン受容体陽性進行性乳がん患者に対するアルペリシブ+フルベストラント併用療法は、副作用は管理可能であり、PIK3CA遺伝子野生型に比べて変異型で高い抗腫瘍効果を示しました。”
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