・複数治療歴のある進行性胃がん患者が対象のレトロスペクティブ試験
・オプジーボまたはイリノテカンの治療中に急速な腫瘍増大が確認された場合の予後を検証
・オプジーボ群では予後不良因子になり得たが、イリノテカン群では影響が確認されず
2019年1月17日~1月19日に米国・サンフランシスコで開催された消化器がんシンポジウム(ASCO GI 2019)にて抗PD-1抗体薬ニボルマブ(商品名オプジーボ;以下オプジーボ)、またはイリノテカン治療歴のある進行性胃がん患者を対象に、両剤の治療中に急速な腫瘍増大(HPD:Hyperprogressive disease)が確認された場合の予後について検証したレトロスペクティブ試験の結果が国立がん研究センター中央病院・青木 雅彦医師らにより公表された。
本試験は、 オプジーボ、またはイリノテカン治療歴のある進行性胃がん患者(N=98人,オプジーボ32人、イリノテカン66人)を対象に、両剤の治療前、治療直後、治療中の少なくとも3回の腫瘍効果判定をし、急速な腫瘍増大(HPD:治療開始前に比べて50%以上の腫瘍増大を示した場合として定義)が確認された場合の全生存期間(OS)を比較検証したレトロスペクティブ試験である。
本試験が実施された背景としては、抗PD-1抗体薬治療中に急速な腫瘍増大(HPD)が確認された進行性固形がん患者の予後は不良であることが過去の臨床試験で明らかになっていることが挙げられる。しかしながら、他の薬剤と比べて急速な腫瘍増大(HPD)が予後に与える影響力については他の臨床試験で明らかになっていない。以上の背景より本試験が開始された。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。
前治療歴中央値
オプジーボ群=3レジメン
イリノテカン群=2レジメン
治療介入後の急速な腫瘍増大が確認された患者
オプジーボ群=28.1%(N=9人)
イリノテカン群=13.5%(N=9人)
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。
治療介入後の全生存期間(OS)中央値はオプジーボ群4.1ヶ月(95%信頼区間:4.6-9.3ヶ月)に対してイリノテカン群7.0ヶ月(95%信頼区間:6.3-9.3ヶ月)。また、急速な腫瘍増大(HPD)が確認された患者、そうでない患者それぞれの全生存期間(OS)中央値はオプジーボ群1.9ヶ月に対して6.4ヶ月(P=0.0007)。イリノテカン群7.3ヶ月に対して7.0ヶ月(P=0.3345)。
以上のレトロスペクティブ試験の結果より青木 雅彦医師らは以下のように結論を述べている。”急速な腫瘍増大(HPD)はイリノテカン群に比べてオプジーボ群で多くの患者に確認されました。また、オプジーボ群における急速な腫瘍増大(HPD)は予後不良因子になり得ますが、イリノテカン群では予後への影響が確認されませんでした。”
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