2019年1月17日~1月19日まで米国・サンフランシスコで開催された消化器癌シンポジウム(ASCO GI 2019)にてステージ3大腸がん高齢者患者に対する術後化学療法の有効性を検証した試験の結果が公立陶生病院・外科・林直美医師らにより公表された。
本試験は、2008年~2015年までに公立陶生病院にて治療を受けた70歳以上のステージ3大腸がん患者を対象に、術後化学療法を完遂した患者と完遂できなかった患者の間で3年再発率を比較検証したレトロスペクティブ試験の結果である。なお術後化学療法を完遂できなかった患者とは、術後化学療法を途中で中止した患者、手術のみの患者が含まれている。
本試験が実施された背景として、『NCCNガイドライン-大腸がん』においてステージ3大腸がん患者に対する術後化学療法は標準治療として確立しているが、高齢者に対する術後化学療法の有効性は明らかになっていない。
以上の背景より、本試験ではステージ3大腸がん高齢者患者に対する術後化学療法完遂の有無による再発率を検証した。本試験に登録された患者背景(N=182人)は、70歳未満が87人、70歳以上が95人、術後化学療法を完遂できた患者61.1%(N=58人)となった。
本試験の追跡期間中央値36.0ヶ月、登録患者30.0%(N=29人)で再発イベントが発生した時点にて、3年再発率は、術後化学療法を完遂した患者群24.3%に対して完遂できなかった患者群37.8%(P=0.29)を示した。
また、様々な解析の結果、N因子(N2のみ)が3年再発率のリスク因子となり(HR6.95、P<0.01)、オキサリプラチンを含む術後化学療法は3年再発のリスク因子(HR10.4、P<0.01)となった。
以上のレトロスペクティブ試験の結果より公立陶生病院・外科・林直美医師らは以下のように結論を述べている。”ステージ3大腸がん高齢者患者に対する術後化学療法は、再発リスクを減少させないことが本試験の結果示されました。特に、オキサリプラチンベースの術後化学療法は無益であるだけでなく有害になり得る可能性が示唆されました。”