・膵がん術後補助化学療法にFOLFIRINOX療法の使用した場合の有効性を検証する第3相試験
・FOLFIRINOXは5-FU、ロイコボリン、オキサリプラチン、イリノテカン併用療法
・無謀生存期間はジェムシタビン12.8ヵ月に比べFOLFIRINOXは21.6ヶ月と有効
2018年12月20日、医学誌『The New England Journal of Medicine』にて術後膵がん患者に対する術後化学療法としてのmFOLFIRINOX併用療法、ゲムシタビン単剤療法の有効性を比較検証した第3相のPRODIGE 24/CCTG PA.6試験(NCT01526135)の結果がInstitut de Cancérologie de Lorraine・Thierry Conroy氏らにより公表された。
PRODIGE 24/CCTG PA.6試験とは、18歳以上のR0/R1切除後3~12週後の膵がん患者(N=493人)に対して術後療法として14日を1サイクルとしてmFOLFIRINOX併用療法(オキサリプラチン85mg/m²+ロイコボリン400mg/m²+イリノテカン150mg/m²+5-FU2.4g/m²)を12サイクル投与する群、または28日を1サイクルとして1日目、8日目、15日目にゲムシタビン1000mg/m²単剤療法を6サイクル投与する群に無作為に振り分け、主要評価項目として無病生存期間(DFS)、副次評価項目として全生存期間(OS)、無転移生存期間(MFS)、治療関連有害事象(TRAE)発症率などを比較検証した多施設共同非盲検下の第3相試験である。
本試験が実施された背景として、術後膵がん患者の予後を改善する治療法を開発するためである。膵がん患者の術後5年生存率は約10%程度であり、ゲムシタビン単剤療法をはじめとした標準治療の開発により予後は改善したものの、現在も約70%程度の患者が術後2年以内に再発を経験する。以上の背景より、転移性膵がんのファーストライン治療としてその有用性が確認されたFOLFIRINOX併用療法の術後化学療法としての有用性を本試験により検証している。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値はmFOLFIRINOX群63歳(30-79歳)に対してゲムシタビン群64歳(30-81歳)。性別はmFOLFIRINOX群で男性57.5%に対してゲムシタビン群54.9%。WHO Performance StatusはmFOLFIRINOX群でスコア0が49.8%、スコア1が50.2%に対してゲムシタビン群でスコア0が52.5%、スコア1が47.5%。
腫瘍の病理学的分類はmFOLFIRINOX群で膵管腺癌98.8%、非膵管腺癌1.2%に対してゲムシタビン群で膵管腺癌98.8%、非膵管腺癌1.2%。進行病期はmFOLFIRINOX群でステージIが4.9%、ステージIIAが17.4%、ステージIIBが74.1%、ステージIIIが0.4%、ステージIVが3.2%に対してゲムシタビン群でステージIが5.7%、ステージIIAが19.1%、ステージIIBが72.8%、ステージIIIが0.4%、ステージIVが2.0%。なお、患者背景は両群間で大きな偏りはなかった。
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である無病生存期間(DFS)中央値はmFOLFIRINOX群21.6ヶ月(95%信頼区間:17.7-27.6ヶ月)に対してゲムシタビン群12.8ヶ月(95%信頼区間:11.7-15.2ヶ月)、癌関連イベント、二次癌の発症、死亡(DFS)のリスクを統計学的有意に42%減少(HR:0.58,95%信頼区間:0.46-0.73,P<0.001)した。
また、1年無病生存率(DFS)、2年無病生存率(DFS)、3年無病生存率(DFS)はそれぞれmFOLFIRINOX群で69.0%(95%信頼区間:62.6%-74.6%)、47.0%(95%信頼区間:40.2%-53.5%)、39.7%(95%信頼区間:32.8%-46.6%)に対してゲムシタビン群で 53.7%(95%信頼区間:47.2%-59.8%)、30.7%(95%信頼区間:24.8%-36.8%)、21.4% (95%信頼区間:15.8%-27.5%)を示した。
副次評価項目である全生存期間(OS)中央値はmFOLFIRINOX群54.4ヶ月(95%信頼区間:41.8ヶ月-未到達)に対してゲムシタビン群35.0ヶ月(95%信頼区間:28.7-43.9ヶ月)、死亡(OS)のリスクを36%減少(HR:0.64,95%信頼区間:0.48-0.86,P=0.003)した。また、3年全生存率(OS)はmFOLFIRINOX群で63.4%(95%信頼区間:55.7%-70.1%)に対してゲムシタビン群で48.6%(95%信頼区間:40.9%-55.8%)を示した。
無転移生存期間(MFS)中央値はmFOLFIRINOX群30.4ヶ月(95%信頼区間:21.7ヶ月-未到達)に対してゲムシタビン群17.7ヶ月(95%信頼区間:14.2-21.5ヶ月)、遠隔転移または死亡(MFS)のリスクを41%減少(HR:0.59,95%信頼区間:0.46-0.75,P<0.001)した。また、3年無転移生存率(MFS)はmFOLFIRINOX群で48.2%(95%信頼区間:41.0%-55.0%)に対してゲムシタビン群で30.9%(95%信頼区間:24.4%-37.6%)を示した。
一方の安全性として、グレード3または4の治療関連有害事象(TRAE)発症率はmFOLFIRINOX群75.9%に対してゲムシタビン群52.9%であった。なお、ゲムシタビン群よりもmFOLFIRINOX群で統計学的有意に発症率が高かったグレード3または4の治療関連有害事象(TRAE)は下痢、γ-GTP上昇、知覚異常、疲労感、末梢神経障害、吐き気、嘔吐、腹痛、粘膜炎であった。一方でmFOLFIRINOX群よりもゲムシタビン群で統計学的有意に発症率が高かったグレード3または4の治療関連有害事象(TRAE)は血小板減少症であった。
以上のPRODIGE 24/CCTG PA.6試験の結果よりThierry Conroy氏らは以下のように結論を述べている。”術後膵がん患者に対する術後化学療法としてのmFOLFIRINOX併用療法は、ゲムシタビン単剤療法に比べて生存率を統計学的に改善しました。