・MSSまたはMSIの早期大腸がん患者が対象の第2相試験
・術前化学療法としてのオプジーボ+ヤーボイ併用療法の有効性・安全性を検証
・MSI群では病理学的奏効率100%を示し、MSS群でも病理学的奏効率27%を示した
2020年4月6日、医学誌『Nature Medicine』にてマイクロサテライト不安定性のない(MSS)またはマイクロサテライト不安定性(MSI)の早期大腸がん患者に対する術前化学療法としての抗PD-1抗体薬であるニボルマブ(商品名オプジーボ;以下オプジーボ)+抗CTLA-4抗体薬であるイピリムマブ(商品名ヤーボイ;以下ヤーボイ)併用療法の有効性、安全性を検証した第2相のNICHE試験(NCT03026140)の結果がNetherlands Cancer InstituteのMyriam Chalabi氏らにより公表された。
NICHE試験とは、マイクロサテライト不安定性のない(MSS)またはマイクロサテライト不安定性(MSI)の早期大腸がん患者に対する術前化学療法として1、15日目にオプジーボ3mg/kg+1日目にヤーボイ1mg/kg併用療法を投与し、主要評価項目として忍容性、フィジビリティを検証した第2相試験である。なお、マイクロサテライト不安定性のない(MSS)患者群に対しては1日1回セレコキシブ200mgを併用する群としない群に分けている。
本試験が開始された背景として、マイクロサテライト不安定性(MSI)の転移性大腸がん患者に対する抗PD-1抗体薬、抗CTLA-4抗体薬などの免疫チェックポイント阻害薬は有効性が確認されているが、マイクロサテライト不安定性のない(MSS)患者に対しては確認されていない。この原因は、マイクロサテライト不安定性(MSI)腫瘍の遺伝子変異量(TMB)が高率であることが1つの要因として考えられている。
一方、近年の臨床試験では早期の悪性黒色腫、肺がん、尿路上皮がんに対する免疫チェックポイント阻害薬は進行期に比べて高い抗腫瘍効果を示しているが、この理由はT細胞浸潤が関係している可能性がある。以上の背景より、早期大腸がん患者に対する抗PD-1抗体薬オプジーボ+抗CTLA-4抗体薬ヤーボイ併用療法の有用性が本試験にて確認された。
本試験に登録された40人の患者背景は下記の通りである。年齢中央値はマイクロサテライト不安定性(MSI;以下MSI)群58.4歳(22‐82歳)に対してマイクロサテライト不安定性のない(MSS;以下MSS)群65.9歳(44‐77歳)。性別はMSI群で女性57%、男性43%に対してMSS群で女性53%、男性47%。
進行病期はMSI群でステージIが9.5%、ステージIIが9.5%、ステージIIIAが4.8%、ステージIIIBが47.6%、ステージIIICが28.6%に対してMSS群でステージIが20%、ステージIIが35%、ステージIIIAが5%、ステージIIIBが30%、ステージIIICが5%。
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。マイクロサテライト不安定性(MSI)群では病理学的奏効率(pathological response)100%(95%信頼区間:86-100%,N=20/20)を示し、その内19人の患者で病理学的奏効(MPR:活動性のある腫瘍細胞が10%以下と定義)が確認された。
一方、マイクロサテライト不安定性のない(MSS)群では病理学的奏効率(pathological response)27%(95%信頼区間:8–55%,N= 4/15人)を示し、その内3人の患者で病理学的奏効(MPR:活動性のある腫瘍細胞が10%以下と定義)が確認された。
そして、主要評価項目であるフィジビリティは、全ての患者で治療開始より6週間以内に根治的切除を受け、100%の切除率が確認された。忍容性に関しては、グレード3~4の治療関連有害事象(TRAE)発症率は13%の患者で確認され、2人の患者で皮膚障害、1人の患者で大腸炎を発症するも、各対処療法により寛解している。
以上のNICHE試験の結果よりMyriam Chalabi氏らは以下のように結論を述べている。”マイクロサテライト不安定性のない(MSS)またはマイクロサテライト不安定性(MSI)の早期大腸がん患者に対する術前化学療法としての抗PD-1抗体薬オプジーボ+抗CTLA-4抗体薬ヤーボイ併用療法は、新しい治療選択肢になり得る可能性が示唆されました。”
リサーチのお願い
この記事に利益相反はありません。