6月9日、米メルク社は、進行性または転移を有する尿路上皮がん(膀胱がん)に対して、抗PD-1抗体であるキイトルーダ(一般名:ペムブロリズマブ 以下キイトルーダ)を一次治療としての単独療法および化学療法との併用療法の有効性を標準治療の化学療法と比較検討した第3相KEYNOTE-361試験(NCT02853305)の最終解析の結果を公表した。
キイトルーダは、さまざまな種類やステージの膀胱がんのうち、3つの適応症に対する承認をFDAから取得している。さらに、転移を有する膀胱がん、筋層浸潤性膀胱がん、筋層非浸潤性膀胱がんを含むさまざまな膀胱がんで単独療法や他のがん治療薬との併用療法として研究を進めている。
KEYNOTE-361試験では、進行性または転移を有する尿路上皮がんを対象に、一次治療として、キイトルーダの単独療法とキイトルーダ+シスプラチンまたはカルボプラチン+ゲムシタビン併用療法と標準治療であるシスプラチンまたはカルボプラチン+ゲムシタビン療法の3群に無作為に割り付けた。主要評価項目は全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目は奏功期間、病勢コントロール率、全奏効率および安全性で評価した。
同試験の最終解析では、化学療法単独群に対してキイトルーダと化学療法の併用療法群でOSおよびPFSの延長が認められたものの統計学的有意差は示せなかった。また、キイトルーダ単独療法群においては、キイトルーダ併用療法群で優越性を示せなかった結果を踏まえ統計学的検定は行われなかった。一方安全性については、これまで報告されたキイトルーダの安全性プロファイルと一貫しており、新たな安全性シグナルは認められなかった。同試験の結果は今後医学系学会で発表され、米国食品医薬品局(FDA)などと協議する予定。
研究開発本部シニアバイスプレジデント、グローバル臨床開発責任者でチーフメディカルオフィサーのRoy Baynes博士は、「この試験では、治療歴のない進行性または転移を有する膀胱がんの患者を対象に、キイトルーダと化学療法との併用療法について、実薬対照として現行の標準治療である化学療法併用レジメンとの厳密な比較が行われました。これらの試験結果は残念なものでしたが、キイトルーダは転移を有する膀胱がんの治療において重要な選択肢として確立されています。引き続き、より多くの患者さんを救うため研究に全力を尽くします」と述べている。
キイトルーダについて
自己の免疫力を高め、がん細胞を見つけて攻撃するのを助ける抗PD-1抗体。キイトルーダはPD-1とそのリガンドであるPD-L1およびPD-L2との相互作用を阻害して、がん細胞を攻撃するTリンパ球を活性化するヒト化モノクローナル抗体である。日本では悪性黒色腫、切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん、再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫、がん化学療法後に増悪した根治切除不能な尿路上皮がん、がん化学療法後に増悪した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形癌がん標準的な治療が困難な場合に限る)、根治切除不能又は転移性の腎細胞がん、再発又は遠隔転移を有する頭頸部がんの効能又は効果で承認を取得している。
膀胱がんについて
2018年には世界で約55万人が膀胱がんと診断され、約20万人が膀胱がんにより死亡したと推定されている。進行性または転移を有する膀胱がん(ステージIV)の5年生存率は約5%。尿路上皮がんは膀胱がんの中で最も多く、膀胱の内側を覆う尿路上皮細胞に発生するものをいう。
参照元
MSD株式会社 ニュースリリース
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