・高齢の食道がん患者が対象の第3相試験
・TS-1を併用した同時化学放射線療法の有効性・安全性を放射線療法単独と比較検証
・全患者における2年全生存率は53.2%であり、放射線療法単独に対して有意に改善し、完全奏効率も改善を認めた
2021年8月5日、医学誌『JAMA Oncology』にて70~85歳の高齢食道がん患者に対するTS-1(一般名:テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム、以下TS-1)を含む同時化学放射線療法(CCRT)の有効性、安全性を放射線療法単独と比較検証した第3相試験(NCT02813967)の結果がCancer Hospital of the University of Chinese Academy of ScienceのYongling Ji氏らにより公表された。
本試験は、70~85歳の高齢食道がん患者(N=298人)に対してTS-1を含む同時化学放射線療法(CCRT)を行う群、または放射線療法(RT)のみを行う群に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として2年全生存率(OS)を比較検証したランダム化オープンラベルの第3相試験である。
本試験が開始された背景として、高齢食道がん患者の大半は標準的な同時化学放射線療法(CCRT)を完遂することができない。そのため、効果的で忍容性のある化学放射線療法(CCRT)レジメンの開発が必要とされている。以上の背景より、70~85歳の高齢食道がん患者に対するTS-1を含む同時化学放射線療法(CCRT)の有用性を検証する目的で本試験が開始された。
本試験に登録された298人のうち、男性は60.4%(N=180人)。年齡中央値は同時化学放射線療法(CCRT)群で77歳(74~79歳)、放射線療法(RT)群で77歳(74~80歳)。進行病期はステージIIIもしくはIVが50.7%(N=151人)。以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。
フォローアップ期間中央値33.9ヶ月時点における主要評価項目である2年全生存率(OS)の結果は、同時化学放射線療法(CCRT)群の53.2%に対して放射線療法(RT)群で35.8%と、同時化学放射線療法(CCRT)群で死亡(OS)のリスクを37%(HR:0.63、95%信頼区間:0.47-0.85、P=0.002)統計学的有意に改善した。また、副次評価項目である完全奏効率(CR)は同時化学放射線療法(CCRT)群の41.6%に対して放射線療法(RT)群で26.8%と、同時化学放射線療法(CCRT)群で高率(P=0.007)であった。
一方の安全性として、グレード3以上の白血球減少症の発症率は同時化学放射線療法(CCRT)群の9.5%に対して放射線療法(RT)群で2.7%と、同時化学放射線療法(CCRT)群で高率(P=0.01)であった。白血球減少症を除いて、グレード3以上の有害事象(AE)発症率は両群間で統計学有意な差は確認されなかった。なお、治療関連有害事象(TRAE)を原因とした死亡率は、同時化学放射線療法(CCRT)群の2.0%(N=3人)に対して放射線療法(RT)群で2.7%(N=4人)であった。
以上の第3相試験の結果よりYongling Ji氏らは「高齢食道がん患者に対するTS-1を含む同時化学放射線療法(CCRT)は全生存期間(OS)を統計学的有意に改善し、忍容性も問題ありませんでした」と結論を述べている。
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