・治療歴のある転移性トリプルネガティブ乳がん患者が対象の第2相試験
・リムパーザ+セララセルチブ併用療法の有効性・安全性をリムパーザ単剤療法と比較検証
・無増悪生存期間中央値はリムパーザ+セララセルチブ併用群で5.3ヶ月であり、
リムパーザ単剤群(3.6ヶ月)に対して有意差は認めなかった
5月3日~5日、独ベルリンで開催されたESMO Breast Cancer2022(欧州臨床腫瘍学会乳がん)にて治療歴のある転移性トリプルネガティブ乳がん患者に対するPARP阻害薬であるリムパーザ(一般名:オラパリブ、以下リムパーザ)+ATR阻害薬であるセララセルチブ併用療法の有効性、安全性を比較検証した第2相のVIOLETTE試験の結果が公表された。
VIOLETTE試験は、治療歴のある転移性トリプルネガティブ乳がん患者に対してリムパーザ単剤療法を実施する群、もしくはリムパーザ+セララセルチブ併用療法を実施する群に無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として客観的奏効率(ORR)等を比較検証した第2相試験である。
本試験の結果、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はリムパーザ単剤群の3.6ヶ月(90%信頼区間:2.9-5.4ヶ月)に対してリムパーザ+セララセルチブ併用群で5.3ヶ月(90%信頼区間:3.7-5.5ヶ月)を示し、腫瘍の遺伝子変異ステータスの有無に関係なく両群間で統計学的有意な差は確認されなかった(HR:0.79、90%信頼区間:0.59-1.04、P=0.18)。
また、無増悪生存期間(PFS)のハザードリスク(HR)はBRCA遺伝子変異陽性群(N=96人)で1.02(90%信頼区間:0.63-1.66、P=0.94)、相同組換え修復(HRR)遺伝子変異/BRCA遺伝子変異陰性群(N=47人)で0.54(90%信頼区間:0.28-1.03、P=0.13)、相同組換え修復(HRR)遺伝子変異陰性群(N=130人)で0.76(90%信頼区間:0.50-1.14、P=0.30)を示した。
副次評価項目である客観的奏効率(ORR)はBRCA遺伝子変異陽性群でリムパーザ単剤群の44.2%に対してリムパーザ+セララセルチブ併用群で50.0%、相同組換え修復(HRR)遺伝子変異群のリムパーザ単剤群の15.0%に対してリムパーザ+セララセルチブ併用群で20.0%であり、リムパーザ単剤群に比べてリムパーザ+セララセルチブ併用群で客観的奏効率(ORR)を改善しなかった。
一方、相同組換え修復(HRR)遺伝子変異陰性群ではリムパーザ単剤群の3.9%に対してリムパーザ+セララセルチブ併用群で15.4%を示し、客観的奏効率(ORR)を改善した(ORR:4.45、90%信頼区間:1.30-21.20、P=0.04)。
最も多くの患者で確認された有害事象(AE)は貧血、好中球減少症であった。また、グレード3以上の有害事象(AE)発症率はリムパーザ単剤群の35.5%に対してリムパーザ+セララセルチブ併用群で46.8%であった。
以上のVIOLETTE試験の結果より治験代表医師であるInstitut Gustave RoussyのSuzette Delaloge氏は「基礎試験にて、PARP阻害薬、ATR阻害薬の併用療法は相乗的な抗腫瘍効果を示しました。しかしながら、BRCA遺伝子変異陽性転移性トリプルネガティブ乳がん患者に対するリムパーザ+セララセルチブ併用療法は臨床的ベネフィットを示しませんでした。一方、相同組換え修復(HRR)遺伝子変異/BRCA遺伝子変異陰性群、相同組換え修復(HRR)遺伝子変異陰性群に対するリムパーザ単剤療法の無増悪生存期間(PFS)中央値は1.9ヶ月程度であり、併用療法の3ヶ月以上に比べて低く、PARP阻害薬単剤での効果は乏しく、ATR阻害薬単剤での抗腫瘍効果がある可能性があります」と結論を述べている。
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