タイトル:正しく学ぶ”子宮頸がん”と”HPVワクチン”
講師:宇野 雅哉先生(国立がん研究センター中央病院 婦人腫瘍科)
水田 悠子氏(子宮頸がん体験者/株式会社encyclo代表取締役)
笠井 信輔氏(フリーアナウンサー/悪性リンパ腫体験者)
日時:8月7日(土) 14時〜16時
宇野先生から子宮頸がんとHPVワクチンの基礎知識について、水田さんからは子宮頸がんの体験談をお話しいただきました。
目次
第1部 宇野 雅哉先生による講義
子宮頸がんとは
子宮頸がんとは年間約1万人が罹患し、約3千人がなくなる病気で、ほとんどの子宮頸がんはヒトパピローマウイルス(HPV)に感染することで発症します。
感染後に異形成という細胞に異常をきたした状態を経て、数年から数十年かけて最終的に子宮頸がんになるというプロセスが明確になっているため子宮頸がん検診が有効です。
しかし現在の日本の受診率は、43.7%(2019年)と高くありません。
精密検査を受けた人に絞ると、検診を受けることでがんが見つかる割合は約1~2%、また前がん病変(子宮頸がんの前の状態)は約35%見つかり、予防的に治療できます。
(2017年度東京都検診データより)
HPVワクチンについて
ほとんどの子宮頸がんはHPVの感染によって生じます。よって、感染を予防すると子宮頸がんは生じにくくなります。
HPVには遺伝子の違いで200以上の型があります。その中で子宮頸がんの発がんにかかわる遺伝子型をハイリスクHPVといいます。
ハイリスクHPVのうち大半を占める2つの型を予防する2価ワクチンと4価ワクチン(良性病変のコンジローマを予防するため2価追加されています)を日本では、12~16歳の女児であれば公費で接種できます。
また2020年7月には9価ワクチンが承認され、子宮頸がんの約9割をカバーできるようになりましたが、まだ日本では定期接種の対象ではないため、自費でないと接種ができません。
副反応問題について
日本では2010年にHPVワクチンの公費助成を開始し、対象年代の接種率は70%にまで昇りました。2013年4月には予防接種法に基づき定期接種化。しかし接種後に広範な疼痛や運動障害などの報告が相次ぎ、同年6月に接種の積極的勧奨の一時差し控えられ、接種率が1%未満に落ち込みました。
よって、日本では予防接種法に基づき定期接種は維持するも、接種するよう自治体がお勧めするのは一時差し控えるといった状態になりました。
差し控えとなって以降、日本は副反応についてさまざまな研究が行われました。
2015年9月 厚生労働省副反応検討部会では、「接種後に副反応疑いとして報告された多様な症状は機能性身体症状(血液検査や画像検査で異常があるわけではないが、身体に現れること)である」と結論づけました。
また厚生労働省では大阪大学の祖父江先生を班長として、全国疫学調査を実施。全国約1.8万の診療科に対して多様な症状がどの程度いるか調査したところ、HPVワクチンを打った人でも打っていない人でも、同様の症状が出る方がいることがわかりました。
そのほかに愛知県名古屋市の要請を受けて行われた疫学調査「名古屋スタディ」では、名古屋市に住民票のある小学校6年生から高校3年生までの女子約7万人に対してアンケート調査を実施。
約3万人のデータを解析した結果、「関節や体が痛む」や「突然力がぬける」など24項目にわたる症状は、ワクチンを接種した人と接種していない人で差はみられなかったという結論がでました。
以上の調査や研究が行われた結果、2020年10月に厚生労働省は子宮頸がん・HPVワクチンのリーフレットを接種対象者のいる家庭に個別に通知する方針を示しました。
最後に
HPVワクチンについて、どこで接種できるかなどについては各市区町村のHPをご覧ください。例えば中央区内であれば「中央区 HPVワクチン」とGoogleやYahoo!で検索することで接種可能なクリニックが掲載されています。
その他、学会のHPなどでは子宮頸がんやHPVワクチンについての情報発信を積極的に行なっております。
■公益社団法人日本産婦人科学会
http://www.jsog.or.jp/modules/jsogpolicy/index.php?content_id=4
第2部 水田 悠子氏による講演
がんの経験は10人いれば、10通りあります。今回は“私の体験”を話します。
罹患前からがん検診は受けていました。しかしそこではがんは見つからず、わかったきっかけは、生理でない時期に不正出血が起きたことです。
地元のクリニックを受診するも子宮頸がんとは診断されず、しばらくはそのままにしていました。
しかし、一向によくならないため大学病院を受診しました。そして1週間後、検査結果を聞きに診察室に入ると、
「あ、1人できたのですか?」
という先生。
この時に、がんなんだと思いました。診断はステージ1bII期の子宮頸がんで、子宮を残すことは出来ないと言われました。
事前にインターネットで調べ、ある程度覚悟はしていましたが、予想以上に悪い結果に、”突然がん患者になった”、そんな気持ちになりました。
そして治療のため翌日から休職。当時29歳で、仕事もプライベートも充実した、そんなタイミングでのがん告知。
治療を受けるに際し、様々な決断を求められました。特に大きい決断は、“治療方針”についてです。
いずれは子どもを持ちたいと思っていたので、どうにか子宮を摘出しない方法はないかとセカンドオピニオンを受診。しかし最終的には子宮と卵巣を摘出する決断をしました。
その後入院、8時間の手術を受け、術後に化学療法を受けました。
約半年の治療でしたが、周囲の理解や支えがないと乗り越えられませんでした。当時、家族は病気になる前と変わらない接し方をしてくれ、職場では私の担当していた仕事を引き受けてくれ、友人は定期的に連絡をくれたり、お見舞いに来てくれたりしました。
それぞれの人から伝わる“想い”に気持ちが救われました。
医学的には罹患する確率などを話されますが、当事者はある日突然、がん患者になります。
仕事が忙しい、プライベートが充実している、育児に手がかかる、そんな当人の事情はお構いなしです。
そんなことを知った子宮頸がん体験でした。
第3部 Q&Aディスカッション
第3部はYouTubeのチャット欄で寄せられる質問に、笠井アナによる進行のもと、宇野先生、水田さんにお答えいただきました。
Q. 9価のワクチンが公費になることを待っています。2年以内に公費になる可能性はありそうですか?
Q. ウイルスの感染経路はどのようなものが考えられるのでしょうか?感染防止を完全にしておけばワクチン接種の必要はないのでしょうか?
Q. 米国では21歳までの男性もHPVワクチンを打つそうですが、なぜ日本では男性への接種が取り上げられないのでしょうか?
Q. 公費で打てる2価または4価のワクチンを接種して後日9価を接種できますか?
などなど、様々な質問のお答えいただきました。
最後に
当初有観客にて開催を計画しておりました。しかし、7月下旬時点で、都内の新型コロナ感染者数が3,000人を超え(今は5,000人以上)、よって無観客で実施することになりました。
土曜日の日中にもかかわらず多くの方が見てくれ、以下のような感想をいただきました。
・むやみに怖がるものではなく、正しく理解して利用しようとおもいました。
・18才の子は接種を控えましたが、12才の子は接種させようと思いました。18才の子も自費で接種受けさせたいと思いました。
・副作用は思ったよりは低いという印象。ただ娘に受けさせるかは変わらず悩ましい。
まずはHPVワクチンについて考えるきっかけになってもらえれば幸いです。
ぜひ動画もご視聴ください!
そして視聴後のアンケートにもぜひ、ご回答をお願いします。
https://forms.gle/q2nBKaWRLSjQeE4x6