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非小細胞肺がんの脳転移における全脳照射の意義は?

  • [公開日]2016.11.16
  • [最終更新日]2017.06.29

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非小細胞肺がんは、脳転移の多いがん種であり、脳転移後の生存率が他のがんに比べて低いことが知られている。

非小細胞肺がんの脳転移には、全脳照射(WBRT;whole-brain radiotherapy)とデキサメタゾンの併用が広く使われている。しかし、全脳照射が生活の質QOL)あるいは全生存期間OS)を改善することを示した無作為比較臨床試験はなかった。

そこで、英国Northern Centre for Cancer Care, Newcastle Hospitals NHS Foundation TrustのMulvenna P氏らは、生存およびQOLへの大きな影響なしに全脳照射を省けるという仮説を立て、脳転移非小細胞肺がんにおけるWBRTの有効性を評価するQUARTZ(The Quality of Life after Treatment of Brain Metastases)試験(NCT00403065)を行い、その結果を9月4日のLancet Onlineに発表した。

目次

全脳照射を行わなくとも生活の質が変わらないかを確認する試験

QUARTZ試験は非劣性、第3相無作為比較試験であり、英国69施設と豪州3施設で実施された。脳転移陽性で手術切除または定位放射線照射(ガンマナイフサイバーナイフ)が適用できない非小細胞肺がん患者を無作為に「全脳照射+最適なサポティーティブケア群(以下、WRBT+OCS群)」と「最適なサポーティブケア単独群(以下、OCS群)」に1:1で割り付けた。

最適なサポーティブケアとは、デキサメタゾン治療を含むサポーティブケアである。デキサメタゾンの投与量は患者の症状に合わせ、症状の改善と共に漸減した。全能照射は20Gyの5分割照射。

主要評価項目は質調整生存年(QALY(クオリイ):quality adjusted life-years)。QALYは全生存期間とEQ-5D QOL質問票から算出した。最適なサポーティブケア群の非劣性は、全脳照射から7QALY日の劣性までとした。副次的評価項目は全生存期間(OS)およびQOLである。

全脳照射を行わなくとも生活の質と生存期間に差がない可能性

2007年3月2日~2014年4月29日に546名の患者が登録され、WBRT+OCS群269名とOCS単独群269名に無作為に割り付けられた。被験者の年齢中央値は66歳であった。

結果、主要評価項目である平均QALYはWBRT+OSC群で46.3日、OSC単独群で41.7日、2群間の差は4.7日であった。副次的評価項目の生存期間は、WBRT+OSC群9.2週、OSC単独群8.5週で、両群間に差は見られなかった(HR:1.06、95%CI:0.90-126、p=0.8084)。

QOLについても4、8、12週の評価で両群に有意な差は見られなかった。

有害事象については、WBRT+OSC群で眠気、脱毛、嘔気、頭皮の乾燥と掻痒が多く見られた。

Mulvenna P氏らは、主要評価項目は事前に設定した非劣性マージン内であったものの、両群間のQALYのわずかな差、生存およびQOLの差の欠如を合わせて考えると、WBRTによる臨床的に顕著なベネフィットの追加はほとんどないとしている。

Dexamethasone and supportive care with or without whole brain radiotherapy in treating patients with non-small cell lung cancer with brain metastases unsuitable for resection or stereotactic radiotherapy (QUARTZ): results from a phase 3, non-inferiority, randomised trial(Lancet, Volume 388, No. 10055, p2004–2014, 22 October 2016)

記事:加藤 テイジ & 可知 健太

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