・膀胱がん患者に対し、術後化学療法としてのddMVAC療法の有効性を検証した試験
・標準術後化学療法と比較し、ダウンステージング率、完全寛解率などを評価した
・ddMVAC療法は標準術後化学療法と比べ完全寛解率を統計学有意に改善した
2018年8月30日、医学誌『JAMA Oncology』にて膀胱切除術前の筋層浸潤性膀胱がん患者に対する術前化学療法としてのddMVAC療法(dose dense MVAC;メトトレキセート+ビンブラスチン+アドリアシン+シスプラチン)の有効性を現在の標準術前化学療法と比較検証した試験の結果がH. Lee Moffitt Cancer Center and Research Institute・Charles C. Peyton氏らにより公表された。
本試験は、カルテデータから膀胱切除術前の筋層浸潤性膀胱がん患者(N=332人)に対する術前化学療法としてddMVAC療法を投与する群(N=46人)、または標準術前化学療法(N=236人,ゲムシタビン+シスプラチンまたはゲムシタビン+カルボプラチン)を投与する群に振り分け、主要評価項目としてダウンステージング率、完全奏効率(CR rate)、全生存率(OS rate)を比較検証した試験である。
本試験が実施された背景として、膀胱がん患者に対する膀胱切除術+術前化学療法は、膀胱切除術単独よりも全生存率(OS rate)を改善することが示されていた。そして、この術前化学療法としてはゲムシタビン+シスプラチン併用療法が標準治療であるが、いくつかの施設ではddMVAC療法が使われている。そこで、標準術前化学療法に対するddMVAC療法のダウンステージング率、全生存率(OS rate)における有効性が比較検証された。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢は67歳(60-74歳)。性別は男性77.4%(N=861人)。人種は白人94.4%(N=1051人)、黒人2.4%(N=27人)、ヒスパニック系3.1%(N=35人)、その他3.1%(N=35人)。以上のような背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。
主要評価項目であるダウンステージング率はddMVAC療法群52.2%(N=24人)に対してゲムシタビン+シスプラチン群41.3%(N=92人)、ゲムシタビン+カルボプラチン群27.0%(N=10人)であった。
また、完全奏効率(CR rate)はddMVAC療法群41.3%に対してゲムシタビン+シスプラチン群24.5%、ゲムシタビン+カルボプラチン群9.4%、ddMVAC療法群で完全奏効率(CR rate)は統計学有意に高率であった(P < .001)。
2年全生存率(OS rate)はddMVAC療法群73.3%(95%信頼区間:48.0%-89.1%)に対してゲムシタビン+シスプラチン群62%(95%信頼区間:53.4%-69.9%)、ゲムシタビン+カルボプラチン群34.8%(95%信頼区間:18.8%-55.1%)、ddMVAC療法群で死亡のリスク(OS)を減少するも統計学有意な差は確認されなかった。
以上の試験の結果よりCharles C. Peyton氏らは以下のように結論を述べている。”膀胱切除術前の筋層浸潤性膀胱がん患者に対する術前化学療法としてのddMVAC療法は、現在の標準術前化学療法に比べて完全奏効率(CR rate)を統計学有意に改善しました。”
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