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HER2陰性炎症性乳がん患者に対する術前化学療法としての抗EGFRモノクローナル抗体薬ベクティビックス+化学療法併用療法、病理学的完全奏効率(pCR)28%を示す医学誌『JAMA Oncology』より

  • [公開日]2018.10.16
  • [最終更新日]2019.04.18
この記事の3つのポイント
炎症性乳がん患者対象の術前化学療法としてのベクティビックス+化学療法の第Ⅱ相試験
トリプルネガティブ乳がん患者も含めたHER2陰性乳がん患者を対象とした
・全患者群で病理学的完全奏功28%、安全性も確認された

2018年9月、医学誌『JAMA Oncology』にてHER2陰性炎症性乳がん患者に対する術前化学療法としての抗EGFRモノクローナル抗体薬であるパニツムマブ(商品名ベクティビックス;以下ベクティビックス)+化学療法併用療法有効性を検証した第II相試験(NCT01036087)の結果がThe University of Texas MD Anderson Cancer Center・Naoko Matsuda氏らにより公表された。

本試験は、HER2陰性炎症性乳がん患者(N=40人)に対する術前化学療法としてベクティビックス2.5mg/kg単剤療法を投与し、その後ベクティビックス2.5mg/kg+ナブパクリタキセル100mg/㎡+カルボプラチン(PNC)併用療法を投与し、その後フルオロウラシル500mg/㎡エピルビシン100mg/㎡+シクロホスファミド500mg/㎡(FEC)併用療法を投与し、主要評価項目として病理学的完全奏効率(pCR)、副次評価項目として安全性を検証したシングルアームの第II相試験である。

本試験が実施された背景として、他の乳がんに比べて炎症性乳がんの治療成績が不良であるためである。炎症性乳がんは乳がん全体の3%から5%を占めるが、その病勢進行スピードは他の乳がんに比べて早く、術前化学療法の病理学的完全奏効率(pCR)は15%程度と低率である。また、炎症性乳がんは他の乳がんに比べてEGFR発現率が50%程度と高率である。以上の背景より、HER2陰性炎症性乳がん患者に対して標準治療の術前化学療法に抗EGFRモノクローナル抗体薬であるベクティビックスを加えた併用療法の有効性、安全性が本試験より検証された。

本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値は57歳(23-68歳)。閉経ステータスは閉経後が72%(N=29人)。ホルモン受容体ステータスはトリプルネガティブが19人、HER2陰性ホルモン受容体陽性が21人。

以上の背景を有する患者に対する本試験のフォローアップ期間中央値19.3ヶ月時点における結果は下記の通りである。主要評価項目である病理学的完全奏効率(pCR)は全患者群で28%(95%信頼区間:15%-44%)、トリプルネガティブ群で42%(95%信頼区間:20%-66%)、HER2陰性ホルモン受容体陽性群で14%(95%信頼区間:3%-36%)。

一方の安全性として、最も多くの患者で確認された非血液関連の治療関連有害事象(TRAE)は皮膚障害。また、血液関連の治療関連有害事象(TRAE)5人を含む10人の患者が有害事象(AE)のために入院したが、治療関連有害事象(TRAE)により死亡した患者はいなかった。

以上の第II相試験の結果よりNaoko Matsuda氏らは以下のように結論を述べている。”HER2陰性炎症性乳がん患者に対する術前化学療法としての抗EGFRモノクローナル抗体薬ベクティビックス+化学療法併用療法は、トリプルネガティブ乳がんを含む全患者群で病理学的完全奏効率(pCR)28%を示しました。”

Safety and Efficacy of Panitumumab Plus Neoadjuvant Chemotherapy in Patients With Primary HER2-Negative Inflammatory Breast Cancer(JAMA Oncol. 2018;4(9):1207-1213. doi:10.1001/jamaoncol.2018.1436)

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