・ポマリドミド+シクロホスファミド+デキサメタゾン併用療法の有効性を検証した第2相試験の結果が公表された
・対象はベルケイド+レブラミド+デキサメタゾン併用療法後の再発難治性多発性骨髄腫患者だった
・PCd療法開始4サイクル時点における部分奏効以上の奏効率はアームA/アームB群85%を示した
2018年12月13日、医学誌『blood』にて再発難治性多発性骨髄腫患者に対する免疫調節薬(iMids)であるポマリドミド(商品名ポマリスト;以下ポマリスト)+シクロホスファミド+デキサメタゾン併用療法(PCd)の有効性を検証した第2相試験(NCT02244125)の結果がUnite Mixte de Recherche (UMR)_S 938のLaurent Garderet氏らにより公表された。
本試験は、ボルテゾミブ(商品名ベルケイド;以下ベルケイド)+レナリドミド(商品名レブラミド;以下レブラミド)+デキサメタゾン併用療法(VRd)後の再発難治性多発性骨髄腫患者(N=50人)に対して28日を1サイクルとして1~21日目に1日1回ポマリスト4mg+1、8、15、22日目に1日1回シクロホスファミド300mg+1、2、3、4、15、16、17、18日目に1日1回デキサメタゾン40mg併用療法(PCd)を4サイクル投与後、メルファラン200mg/m2+自家造血幹細胞移植(MEL/AHSCT)を実施後、地固め療法としてPCd療法を2サイクル投与後、維持療法として28日を1サイクルとして1~21日目に1日1回ポマリスト4mg+1、8、15、22日目に1日1回デキサメタゾン20mg併用療法(Pd)を病勢進行まで投与する群(N=48人、アームA)、またはPCd療法を9サイクル投与後、維持療法として28日を1サイクルとして1~21日目に1日1回ポマリスト4mg+1、8、15、22日目に1日1回デキサメタゾン20mg併用療法(Pd)を病勢進行まで投与する群(N=49人、アームB)に分けて、主要評価項目としてPCd療法開始4サイクル時点における部分奏効(PR)以上の奏効率、その他評価項目として無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)などを検証した多施設共同非盲検下の第2相試験である。
本試験が実施された背景として、プロテアソーム阻害薬であるベルケイド、免疫調節薬(iMids)であるレブラミドの両剤に対して難治性を示した多発性骨髄腫患者の予後の悪さにあり、例えば無増悪生存期間(PFS)中央値は5ヶ月、全生存期間(OS)中央値は15ヶ月程である。そして、両剤に対して難治性を示した患者の治療選択肢は非常に限られているため、本試験によるPCd療法の安全性、有効性が検証された。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値は62歳(39-70歳)。性別は男性62%、女性38%。初回診断時よりPCd療法開始時までの期間中央値は3.6年(3.1-4.2年)。WHO Performance Statusはスコア0または1が97%。M蛋白の型はIgG型73%、IgA型15%、軽鎖型10%、その他2%。ISS分類による病期はステージIが67%、ステージIIが12%、ステージIIIが6%。染色体異常のステータスは標準リスクが69%、ハイリスク(del17、t(14;16)のいずれか)が12%、不明が19%。なお、両群間で患者背景に大きな偏りはなかった。
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目であるPCd療法開始4サイクル時点における部分奏効(PR)以上の奏効率はアームA群85%(N=41/48人)に対してアームB群84%(N=41/49人)、アームA/アームB群85%(N=82/97)を示した。
また、奏効の内訳としてはアームA群で完全奏効(CR)2%(N=1人)、最良奏効(VGPR)33%(N=16人)、部分奏効(PR)50%(N=24人)に対してアームB群で完全奏効(CR)0%、最良奏効(VGPR)33%(N=16人)、部分奏効(PR)51%(N=25人)を示した。
その他評価項目である無増悪生存期間(PFS)はアームA群で1年無増悪生存率(PFS)89.4%(95%信頼区間:81.0%-98.6%)、2年無増悪生存率(PFS)79.6%(95%信頼区間:68.4%-92.5%)、3年無増悪生存率(PFS)54.5%(95%信頼区間:39.2%-75.8%)に対してアームB群で1年無増悪生存率(PFS)78.8%(95%信頼区間:68.0%-91.4%)、2年無増悪生存率(PFS)55.9%(95%信頼区間:42.0%-74.3%)、3年無増悪生存率(PFS)40.0%(95%信頼区間:25.8%-62.1%)を示した。
全生存期間(OS)はアームA群で1年全生存率(OS)98.0%(95%信頼区間:94.1%-100%)、2年全生存率(OS)95.9%(95%信頼区間:90.5%-100%)、3年全生存率(OS)84.2%(95%信頼区間:73.1%-97.0%)に対してアームB群で1年全生存率(OS)98.0%(95%信頼区間:94.2%-100%)、2年全生存率(OS)88.7%(95%信頼区間:79.9%-98.6%)、3年全生存率(OS)85.8%(95%信頼区間:75.7%-97.2%)を示した。
一方の安全性として、グレード1または2の治療関連有害事象(TRAE)発症率は両群で97%(N=97/100人)、グレード3または4の治療関連有害事象(TRAE)発症率は両群で73%(N=73/100人)を示した。
なお、主なグレード1または2の治療関連有害事象(TRAE)は無力症50%、気管支炎25%、便秘23%、筋肉の痙攣22%、不眠症22%、骨痛20%、下痢16%、浮腫15%、呼吸困難15%、震え14%、吐き気12%、腹痛11%、咳11%、皮膚障害10%。主なグレード3または4の治療関連有害事象(TRAE)は好中球減少症51%、リンパ球減少症37%、貧血7%、肺炎6%、血小板減少症5%であった。
以上の第2相試験(NCT02244125)の結果よりLaurent Garderet氏らは以下のように結論を述べている。”VRd療法後の再発難治性多発性骨髄腫患者に対するPCd療法は、部分奏効(PR)以上の奏効率84%~85%を示し、メルファラン+自家造血幹細胞移植(MEL/AHSCT)の有無に関係なく良好な無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)を達成しました。”
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