2018年10月20日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)患者に対する根治的膀胱摘除術前の術前化学療法としての抗PD-1抗体薬であるペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ;以下キイトルーダ)単剤療法の有効性を検証した第Ⅱ相のPURE-01試験(NCT02736266)の結果がFondazione Istituto di Ricovero e Cura a Carattere Scientifico・Andrea Necchi氏らにより公表された。
PURE-01試験とは、根治的膀胱摘除術前の筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)患者に対して術前化学療法として3週に1回キイトルーダ200mg単剤療法を3サイクル投与し、主要評価項目として病理学的完全奏効(PCR)、副次評価項目としてPathological downstaging率(T<2)、治療関連有害事象(TRAE)などを検証したシングルアームオープンラベルの第Ⅱ相試験である。
本試験が実施された背景として、筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)患者(N=50人)に対する術前化学療法の標準治療であるシスプラチンベースの化学療法の適応患者が限定されるためである。薬剤の禁忌、患者拒否などを理由にして約50%の患者がシスプラチンベースの術前化学療法を受けることができないのが現状である。
筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)診断後に早期手術を実施することは予後に影響することが明らかであるため、術前化学療法の重要性は高い。そこで、本試験ではシスプラチンベースの化学療法不適応の局所進行性または転移性尿路上皮がん患者に対する1次治療としての有用性が確認されている抗PD-1抗体薬キイトルーダの術前化学療法としての有用性を検証している。
本試験に登録された患者背景は以下の通りである。
・年齢中央値は66歳(60-72歳)。
・性別は男性82%(N=41人)、女性18%(N=9人)。
・TNM分類におけるT因子/N因子の分類はT2N0で42%(N=21人)、T3N0で54%(N=27人)、T2-3N1で4%(N=2人)。
・シスプラチンベース化学療法の適応有無は非適応92%(N=46人)、適応8%(N=4人)。
・キイトルーダ投与サイクル中央値は1サイクルで2%(N=1人)、2サイクルで4%(N=2人)、3サイクルで94%(N=47人)。
・キイトルーダ投与終了後より根治的膀胱摘除までの期間中央値は22日(15-30日)。
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は以下の通りである。
■主要評価項目
・病理学的完全奏効(PCR)は42%(95%信頼区間:28.2%-56.8%,N=21人)を示した。
・PD-L1発現ステータス別の病理学的完全奏効(PCR)はPD-L1発現率10%以上群(N=35人)で54.3%、PD-L1発現率10%未満群(N=15人)で13.3%を示した。
■副次評価項目
・Pathological downstaging率(T<2)は54%(N=27人)を示した。
・PD-L1発現ステータス別のPathological downstaging率(T<2)はPD-L1発現率10%以上群で65.7%、PD-L1発現率10%未満群で26.7%を示した。
■安全性
・最も多くの患者で確認された全グレードの治療関連有害事象(TRAE)は甲状腺機能亢進症12%(N=6人)、甲状腺機能低下症6%(N=3人)、AST/ALT上昇8%(N=4人)、貧血症6%(N=3人)、痒み6%(N=3人)、発熱6%(N=3人)であった。
・グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)はAST/ALT上昇2%(N=1人)、貧血症2%(N=1人)、下痢2%(N=1人)であった。
以上のPURE-01試験の結果よりAndrea Necchi氏らは以下のように結論を述べている。“根治的膀胱摘除術前の筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)患者に対する術前化学療法としての抗PD-1抗体薬キイトルーダ単剤療法は病理学的完全奏効(PCR)42%を示し、忍容性も良好でした。”
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