・UDPグルクロン酸転移酵素(UGT1A1)遺伝子多型の局所進行性直腸がん患者が対象の第3相試験
・術前療法としての骨盤放射線療法+カペシタビン+イリノテカン併用療法の有効性・安全性を比較検証
・病理学的完全奏効率は30%を示した
2020年10月29日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にてUDPグルクロン酸転移酵素(UGT1A1)遺伝子多型の局所進行性直腸がん患者に対する術前療法としての骨盤放射線療法+カペシタビン+イリノテカン併用療法の有効性、安全性を比較検証した第3相試験(NCT02605265)の結果がFudan University Shanghai Cancer CenterのJi Zhu氏らにより公表された。
本試験は、UDPグルクロン酸転移酵素(UGT1A1)遺伝子多型の局所進行性直腸がん患者(N=356人)に対する術前療法としての骨盤放射線療法+カペシタビン併用療法を実施し、その後オキサリプラチン+カペシタビン併用療法を投与する群(control group;N=178人)、または骨盤放射線療法+カペシタビン+イリノテカン65~80mg/m2(UGT1A1*1*1遺伝子多型に対しては65mg/m2、UGT1A1*1*28遺伝子多型に対しては80mg/m2)併用療法を実施し、その後イリノテカン+カペシタビン併用療法を投与する群(experimental group;N=178人)に無作為に振り分け、主要評価項目として病理学的完全奏効率(pCR)を比較検証した多施設共同ランダム化オープンラベルの第3相試験である。なお、手術は放射線併用療法終了後8週間を予定した。
UDPグルクロン酸転移酵素(UGT1A1)遺伝子多型を有する患者に対してイリノテカンの用量を調整することは病理学的完全奏効率(pCR)を改善することが判っている。以上の背景より、局所進行性直腸がん患者に対する術前療法としての骨盤放射線療法+カペシタビン+イリノテカン併用療法の有用性を確認する目的で本試験が開始された。
本試験の結果、主要評価項目である病理学的完全奏効率(pCR)はcontrol groupの15%に対してexperimental groupでは30%(RR:1.96、95%信頼区間:1.30-2.97、P=0.001)を示した。また、完全奏効(CR)を達成した患者はcontrol groupの4人に対してexperimental groupでは6人だった。
なお、手術はcontrol groupで87%、experimental groupで88%の患者が実施された。
一方の安全性として、グレード3~4の有害事象(AE)発症率はcontrol group6%に対してexperimental group38%を示した。最も一多くの患者で確認されたグレード3~4の有害事象(AE)は白血球減少症、好中球減少症、および下痢であった。 なお、周術期合併症発生率はcontrol group 11%に対してexperimental group 15%を示し、両群間で統計学有意な差は確認されなかった(P<0.001)。
以上の第3相試験の結果よりJi Zhu氏らは「UDPグルクロン酸転移酵素(UGT1A1)遺伝子多型の局所進行性直腸がん患者に対する術前療法としての骨盤放射線療法+カペシタビンへのイリノテカンの上乗せは、完全奏効(CR)を改善しました」と結論を述べている。
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