・染色体転座t(11;14)有無を問わず、再発/難治性多発性骨髄腫患者を対象とした第1相試験
・ベネクレクスタ+ダラザレックス+デキサメタゾン±ボルテゾミブ併用療法
(VenDdまたはVenDVd療法)の有効性・安全性を検証
・全奏効率は染色体転座t(11;14)有する患者に対するVenDd療法で96%、
遺伝子変異の有無を問わない患者に対するVenDVd療法で92%を示した
2021年8月13日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて染色体転座t(11;14)有無別の再発難治性多発性骨髄腫(RRMM)患者に対するBCL-2阻害薬であるベネクレクスタ(一般名:ベネトクラクス、以下ベネクレクスタ)+CD38を標的とするモノクローナル抗体であるダラツムマブ(商品名ダラザレックス;以下ダラザレックス)+デキサメタゾン±ボルテゾミブ併用療法の有効性、安全性を検証した第1相試験(NCT03314181)の結果がUniversity of CalgaryのNizar J. Bahlis氏らにより公表された。
本試験は、再発難治性多発性骨髄腫(RRMM)患者(N=48人)のうち、染色体転座t(11;14)を有する患者に対してベネクレクスタ+ダラザレックス+デキサメタゾン(VenDd)併用療法を実施する群(N=24人)、または遺伝子変異の有無に関わらずベネクレクスタ+ダラザレックス+デキサメタゾン+ボルテゾミブ(VenDVd)併用療法を実施する群(N=24人)に分け、主要評価項目として安全性、全奏効率(ORR)、副次評価項目として無増悪生存期間(PFS)、奏効持続期間(DOR)、微小残存病変(MRD)陰性化率などを検証した第1相試験である。
本試験が開始された背景として、多発性骨髄腫(MM)は細胞遺伝学的異常が異なる形質細胞異常の疾患である。近年、複数の作用機序の新薬が開発されているにも関わらず、多くの患者は再発を経験し、抵抗性を示すため利用可能な治療薬が限られてくる。以上の背景より、染色体転座t(11;14)に対して抗腫瘍効果が期待できるベネクレクスタを既存の標準治療に併用した治療法の有用性を検証する目的で本試験が開始された。
本試験の結果、ベネクレクスタ+ダラザレックス+デキサメタゾン(VenDd)併用群において、用量制限毒性(DLT)としてベネクレクスタ800mgでグレード3の発熱性好中球減少症(FN)が1人の患者で確認された。また、ベネクレクスタ+ダラザレックス+デキサメタゾン(VenDd)併用群ならびにベネクレクスタ+ダラザレックス+デキサメタゾン+ボルテゾミブ(VenDVd)併用群の両群で確認された有害事象(AE)は下痢63%に対して54%、吐き気50%に対して50%であった。また、グレード3以上の有害事象(AE)はベネクレクスタ+ダラザレックス+デキサメタゾン(VenDd)併用群の88%に対してベネクレクスタ+ダラザレックス+デキサメタゾン+ボルテゾミブ(VenDVd)併用群で71%であった。
一方の有効性として、全奏効率(ORR)はベネクレクスタ+ダラザレックス+デキサメタゾン(VenDd)併用群の96%(最良部分奏効率は全員)に対してベネクレクスタ+ダラザレックス+デキサメタゾン+ボルテゾミブ(VenDVd)併用群で92%(最良部分奏効率は79%以下)を示し、18ヶ月無増悪生存率(PFS)は90.5%(95%信頼区間:67.0~97.5%)に対して66.7%(95%信頼区間:42.5~82.5%)をそれぞれ示した。
以上の第1相試験の結果よりNizar J. Bahlis氏らは「染色体転座t(11;14)有無別の再発/難治性多発性骨髄腫(RRMM)患者に対するBCL-2阻害薬ベネクレクスタ+CD38を標的とするモノクローナル抗体ダラザレックス+デキサメタゾン±ボルテゾミブ併用療法は、持続的で深い奏効を示すことが確認され、レジメンの継続的な評価を支持するものでした」と結論を述べている。
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