監修:日本医科大学 勝俣範之 先生
目次
「検査結果からどのような診断がついたのか」ということをまず理解しましょう
診断結果の説明で最低限理解しておかなければならないのは、「検査結果からどのような診断がついたか」ということです。その前提として、手術をしないと正確に診断できないがん種もあるため、診断結果が確定診断かどうかを押さえておくことがまず重要です。
確定診断ではない場合、「いつ・どのような検査で診断が確定するのか」という見通しを理解するほか、「がん以外の病気の可能性はどのくらいあるのか」、「これから診断が変わることはあるのか」といったことも確認しておくとよいでしょう。一方、確定診断の場合は、「がんのタイプ(がん細胞の特徴)」に加え、がんの場所、大きさ、広がり――「がんがどこの場所にあるのか」、「どのくらいの大きさ」で、「周りの組織や臓器にどの程度広がっているのか」についても理解したいものです。これらは、その後の治療において最適な方法を選ぶ際に欠かせない情報となります。
がんと診断された際、「頭の中が真っ白になり、医師から説明を受けてもよくわからなかった」という患者さんは大勢います。このような心の反応が起きることを踏まえたうえで、自分の命や治療にかかわる大切な診断結果を冷静に受け止めるには、複数の人で説明を聞くのが望ましいとされています。また、あとから聞き直せるように、許可を得たうえで医師の説明を録音するのもよいでしょう。確定診断後、治療方針や治療法を決めるための画像検査などを引き続き行い、その結果によっては診断が変わることもあります。「最初に受けた診断結果がすべてではない」ということも心得ておくことが肝心です。
知っていると、診断結果への理解がより深まる医学用語
クラス分類
検査や手術で採取した細胞を顕微鏡で診断し、その異常性を判定した分類。一般的に「異型細胞または異常な細胞がない」クラス1から「細胞学的に悪性が確定的である」クラス5までに分類されます。
組織型
顕微鏡で観察すると、がん細胞やその組織には違いがあり、いくつかの種類に分類されます。たとえば、肺がんの組織型は、腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん、小細胞がんの4種類に分類されます。
悪性度(グレード)
わかりやすくいうと「がんの顔つき」または「たちの悪さ」を表します。「未分化」、「低分化」と呼ばれるタイプは「高分化」タイプよりも、がん細胞の成長や増殖のスピードが速いことがわかっています。がん細胞の分化度(正常細胞と比べて細胞の形がどの程度不揃いか)を調べることで悪性度(グレード)が決まり、その数字が大きくなるほど悪性度が高くなります。
病期(ステージ)
がんの広がりや進行の程度を表す基準です。がんの大きさや、周囲のリンパ節、離れた臓器への転移の有無などによって決まり、多くのがんの病期分類で活用されているのが「TNM分類」です。Tはがんが組織にどれだけ広がっているか、Nはリンパ節への転移があるか、Mは他臓器に転移しているかどうか、を指します。この分類法によりステージ0~ステージ4の5段階に分類され、数字が大きくなるほど、がんが進行した状態となります。
生存率
診断や治療開始から一定期間が経過して生存している人の割合を示した数字です。一般的には「5年生存率」がよく使われますが、自分に必ずしもあてはまるとはかぎらないため、目安にすることが大事だといわれています。
予後・余命
予後とは、がんの病状や治療などが今後どのような経過をたどるのかという見通しや見込みのことです。余命とは、ある時点でその後どのくらい生きられるのかを医師が予測した期間のことで、不確かなことが多いといわれています。