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EGFR-T790M変異陽性非小細胞肺がん EGFR標的薬に抵抗する進行期にタグリッソ単剤治療で奏効率62% JCO

  • [公開日]2017.03.24
  • [最終更新日]2018.01.18

上皮成長因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害薬の治療後に進行したEGFR活性化変異陽性、またはEGFR-T790変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対し、変異型EGFRチロシンキナーゼ特異的阻害薬オシメルチニブ(商品名タグリッソ)は単剤で奏効率62%をもたらした。国立台湾大学のJames Chih-Hsin Yang氏らが実施した第1/2相(AURA、NCT01802632)の第2相拡大試験の結果が、2017年2月21日のJournal of Clinical Oncologyに掲載された。

目次

試験概要

AURAは日本、台湾、米国、欧州、オーストラリアなどで実施されている単群非盲検試験で、第2相拡大期では201人を対象としてタグリッソ80mgを1日1回連日経口投与した。

その結果、2015年11月1日をデータカットオフとする中間解析で、治療期間中央値は13.2カ月であった。有効性解析対象198人における全奏効率は62%、奏効例122人の奏効持続期間中央値は15.2カ月であった。さらに、病勢安定SD)が認められた患者を含めた病勢コントロール率DCR)は90%(179人)に達し、無増悪生存(PFS)期間中央値は12.3カ月であった。

治療関連有害事象は、主に下痢(発現率43%、グレード3は1%未満)、および発疹(発現率40%、グレード3は1%未満)であった。間質性肺疾患は8人(4%)に認められ、グレード1が2人、グレード3が3人、グレード5が3人であった。

因子別サブグループ解析でも60%前後の一貫した奏効率

タグリッソの治療が二次療法であった61人、三次療法以降であった137人の奏効率はそれぞれ62%、61%、65歳未満の114人、65歳以上の84人ではそれぞれ63%、60%、EGFR-TKI耐性化の原因であるエクソン19欠失変異が試験開始前に確認された140人、L858R変異が確認された49人ではそれぞれ64%、57%、試験開始直前のEGFR-TKI治療期間が6カ月未満の42人、6カ月以上の156人ではそれぞれ55%、63%、中枢神経系への転移が確認されていた74人、転移のなかった124人ではそれぞれ53%、67%であった。

半数以上の患者が無増悪を12カ月維持

治療6カ月後、9カ月後、および12カ月後の無増悪生存(PFS)率はそれぞれ70%、58%、52%であった。PFS期間のサブ解析で、エクソン19欠失変異の患者集団のPFS期間中央値(12.5カ月)はL858R変異陽性患者集団(9.6カ月)と比べ、また、アジア人患者集団のPFS期間中央値(12.6カ月)は非アジア人患者集団(9.7カ月)と比べ、いずれも統計学的有意差には達しなかったが、延長傾向が認められた。前治療のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬がゲフィニチブ(商品名イレッサ)であった患者集団のPFS中央値(12.6カ月)は、エルロチニブ(商品名タルセバ)であった患者集団(11.0カ月)と差はなかった。

中枢神経系転移巣の奏効率も60%台

中枢神経系転移が試験開始前に確認されていた74人のPFS期間中央値(7.1カ月)は、同転移のない患者集団(13.7カ月)と比べ短かった。中枢神経系転移巣の奏効率は64%(16/25人)で、完全奏効(CR)が4人、部分奏効(PR)が12人であった。ほとんどの患者で転移巣の腫瘍縮小が認められた。

EGFR遺伝子二重変異による治療抵抗性NSCLCに対するタグリッソの有用性

タグリッソは、L858RなどEGFRの活性化変異のみならず、第1世代や第2世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬に対する耐性化の原因であるEGFR-T790M変異のチロシンキナーゼをも阻害する標的薬で、既存EGFRチロシンキナーゼ阻害薬に抵抗性でEGFR-T790M変異陽性の手術不能、または再発NSCLCを対象として日本では2016年5月から販売されている。

エクソン19欠失変異やL858R変異などのEGFR活性化変異のNSCLCは、第1世代のタルセバやイレッサ、第2世代のアファチニブ(商品名ジオトリフ)の治療で高い治療成績が得られているが、T790M変異が追加されて二重変異になった場合は耐性化して効かなくなる。その二重変異の患者を主に対象として開発されたEGFR標的薬がタグリッソである。

これまで、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬の一次療法で進行したNSCLC患者には化学療法が推奨されてきたが、その場合のPFS期間は最長でも6カ月に満たない。そのため、二次療法の戦略が種々検討されてきており、例えば、二次療法以降としてのパクリタキセル(商品名タキソール)とジオトリフの併用療法の試験報告では、PFS期間中央値が5.6カ月、奏効率は32%にとどまっている。EGFR-T790変異陽性患者を対象としてEGFR標的抗体であるセツキシマブ(商品名アービタックス)とジオトリフの併用療法を評価した第2相試験報告でも、PFS期間中央値は4.7カ月、奏効率は32%であった。そして、この併用療法ではグレード3、またはグレード4の有害事象の発現率が高く(各44%、2%)、安全性の課題が示された。

タグリッソの試験成績は、奏効率やPFS、安全性も含め、これらのヒストリカルデータと比べ良好であったことから、EGFR活性化変異とEGFR-T790M変異を重ねているNSCLC患者に対する治療として、タグリッソを推奨するのに十分なデータといえる。

Osimertinib in Pretreated T790M-Positive Advanced Non–Small-Cell Lung Cancer: AURA Study Phase II Extension Component(J Clin Oncol. 2017 Feb 21:JCO2016703223. doi: 10.1200/JCO.2016.70.3223.)

記事:川又 総江
この記事に利益相反はありません。

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