・転移性尿路上皮がん患者が対象の第2相試験
・シスプラチン+ゲムシタビン+ATR阻害薬Berzosertib(ベルゾセルチブ)併用療法の有効性・安全性を比較検証
・無増悪生存期間は8.0ヶ月、全生存期間14.4ヶ月であり、シスプラチン+ゲムシタビン併用療法に対して統計学的有意な改善をいずれも示さなかった
2021年8月26日、医学誌『JAMA Oncology』にて転移性尿路上皮がん患者に対するシスプラチン+ゲムシタビン+ATR阻害薬であるBerzosertib(ベルゾセルチブ)併用療法の有効性、安全性を検証した第2相試験(NCT02567409)の結果がCity of Hope Comprehensive Cancer CenterのSumanta K. Pal氏らにより公表された。
本試験は、転移性尿路上皮がん患者(N=87人)に対して、21日を1サイクルとして1日目にシスプラチン70mg/m2+1、8日目にゲムシタビン1000mg/m2を併用する群(N=41人)と、21日を1サイクルとして1日目にシスプラチン60mg/m2+1、8日目にゲムシタビン875mg/m2+2、9日目にBerzosertib 90mg/m2を併用する群(N=46人)に無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として全生存期間(OS)などを比較検証したオープンラベルランダム化の第2相試験である。
本試験が実施された背景として、転移性尿路上皮がんに対する現在の標準治療はシスプラチン+ゲムシタビン併用療法である。前臨床試験にて、ATRによる一本鎖DNA修復の阻害が転移性尿路上皮がんに対するシスプラチンやゲムシタビン、他の化学療法の細胞毒性を増強することが示唆されている。以上の背景より、転移性尿路上皮がん患者に対するシスプラチン+ゲムシタビン+ATR阻害薬Berzosertib併用療法の有用性を検証する目的で本試験が開始された。
本試験に登録された87人の患者の年齡中央値は67歳(32~84歳)。性別は男性78%(N=68人)。以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。
主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はシスプラチン+ゲムシタビン群の8.0ヶ月に対してシスプラチン+ゲムシタビン+Berzosertib群で8.0ヶ月であった(HR:1.22、95%信頼区間:0.72~2.08)。
副次評価項目である全生存期間(OS)中央値はシスプラチン+ゲムシタビン群の19.8ヶ月に対してシスプラチン+ゲムシタビン+Berzosertib群で14.4ヶ月と、シスプラチン+ゲムシタビン+Berzosertib群で死亡(OS)のリスクを42%(HR:1.42、95%信頼区間:0.76~2.68)増加した。
一方の安全性として、血小板減少症はシスプラチン+ゲムシタビン群の39%に対してシスプラチン+ゲムシタビン+Berzosertib群で59%、好中球減少症はシスプラチン+ゲムシタビン群の27%に対してシスプラチン+ゲムシタビン+Berzosertib群で37%の患者で確認された。
また、シスプラチン+ゲムシタビン+Berzosertib群は有害事象の発症により減量され、シスプラチンの投与量中央値はシスプラチン+ゲムシタビン群がシスプラチン370mg/m2であるのに対し、シスプラチン+ゲムシタビン+Berzosertib群はシスプラチン250mg/m2であり有意に減量されていた(p<0.001)。
以上の第2相試験の結果よりSumanta K. Pal氏らは「転移性尿路上皮がん患者に対するシスプラチン+ゲムシタビンへのATR阻害薬Berzosertibの上乗せ効果は、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)を延長しませんでした。また、シスプラチン、ゲムシタビンは減量投与にも関わらず、シスプラチン+ゲムシタビン+Berzosertib群で血液関連毒性の有害事象(AE)発症率が増加しました」と結論を述べている。
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